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銹
「銹〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
銹の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
二筋ばかりの白い雪を放射して、それが泥黒い雲を通過する光線に翳されて、何だか赤く
銹びた鉄のように見える、富士山の附近は、御阪山脈や、天守山脈だけを、小島のように....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
に威張り出したも誰のおかげだ、義理知らずめと詈っても取り合ってくれず、身から出た
銹《さび》と自分を恨んで、ひもじく月を眺め、膝栗毛《ひざくりげ》を疲らせた者少な....
「草藪」より 著者:鷹野つぎ
、垂れた両腕も動かさずに、爪先だけでそっととよ子の方へ歩み寄って行った。 低い
銹びた声がすぐ何事か云いはじめた。 「今朝病院から手紙が来てね、とよちゃんに附添....
「クリスマス・カロル」より 著者:ディケンズチャールズ
の周りには古風な刀の鞘を捲いていた。が、その中に中味はなかった。而もその古い鞘は
銹びてぼろぼろになっていた。 「お前さんはこれまで俺のような者を見たことがないん....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
位した。 その坊主頭の盲目のおばあさんが、キンボウとヤイチャンを前にならべて、
銹《さび》た渋いのどで唄の素稽古《すげいこ》をする。そばで聞いていて二絃琴の唄は....
「宝島」より 著者:佐々木直次郎
私は尋ねた。 「ベン・ガンだよ。」と彼は答えた。その声は嗄れていてぎごちなくて、
銹びた錠前のようだった。「俺は可哀そうなベン・ガンだよ。この三年間も人間と口を利....
「ヴェルダン」より 著者:野上豊一郎
させるというよりはもっと深い意味に於いて美しく感じられた。あたりにはまだ鉄条網が
銹びたままで張り残されてあったり、塹壕が草に埋もれて保存されてあったりするのは、....
「二都物語」より 著者:佐々木直次郎
、すべての悪くなった不健康な瓦斯体が這い込んで来るように思われたのであった。その
銹びた鉄棒の間から、ごちゃごちゃになっている附近の様子が、眼で見えるというよりも....
「一世お鯉」より 著者:長谷川時雨
本妻のすることだ。姉さんのしたことは本妻のすることなのだ」 六代目菊五郎のその
銹《さび》た声が室の外まで聞える。 真夏の夕暮、室々のへだての襖《ふすま》は取....
「モルガンお雪」より 著者:長谷川時雨
雪はうっかりした返事をしていた。洛外《らくがい》嵯峨《さが》の大沢の池の月――水
銹《みさび》にくもる月影は青かったが、もっと暗かった。嵐山の温泉に行った夜の、保....
「回想録」より 著者:高村光太郎
でピッタリ喰付くのを良しとする。そうすると、すげた中身の廻りに空気が入らないから
銹が来ない。それをうまく拵えるようにさせる。又柄を削るのも難かしい。削り方に流儀....
「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
は、シャツ二枚半、襟巻き二本、毛糸の靴下が一、二足、コールテンの古半ズボン一着、
銹びたかみそり一|挺、あちこち折りこんだ讃美歌の本一冊、それから、こわれた調子笛....
「糸繰沼」より 著者:長谷川時雨
》から出る薬売りが、蓴菜《じゅんさい》が一《いっ》ぱい浮いて、まっ蒼《さお》に水
銹《みずさび》の深い湖のほとりで午寐《ひるね》をしていると、急に水の中へ沈んでゆ....
「グーセフ」より 著者:神西清
ら、静かな時は一体どこにいるというのか。 グーセフは、山のように大きな魚や、赤
銹の出た太い鎖のことを長いあいだ考える。やがて退屈になって、生れ故郷のことを考え....
「追放されて」より 著者:神西清
に拾いながら、韃靼人は吃り吃り話して行った。――遠い異境の空で病死して、冷たい赤
銹色の土に埋められるのは、神様の思召しではない。もし妻が一日でも一時間でも来て呉....