錦紗[語句情報] »
錦紗
「錦紗〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
錦紗の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
、渋皮のむけた小女がふたりきり―― 「だんなはこちらへ……」 というように、緋
錦紗《ひきんしゃ》の厚い座ぶとんへ右門をすわらせると、女は銅《あか》の銅壺《どう....
「浮動する地価」より 著者:黒島伝治
満足したのは、トシエが二タ棹の三ツよせの箪笥に、どの抽出しへもいっぱい、小浜や、
錦紗や、明石や、――そんな金のかかった着物を詰めこんで持って来たからである。虹吉....
「黄鳥の嘆き」より 著者:甲賀三郎
松屋の風呂敷というと、あそこでお得意先にお使いものにしているものだね」 「はい、
錦紗の風呂敷で松に鶴の模様がついております」 「ふうむ」 野村はじっと考え込ん....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
それもいつか遠ざけてしまった。 ある小雨のふる日、葉子は顔を作って、地紋の黒い
錦紗の紋附などを着て珍らしく一人で外出した。 「私写真|撮りに行ってもいい?」 ....
「指」より 著者:佐左木俊郎
まった。彼女の肩に、無数の肩が突き当たり、擦り合って行った。鼠色の夏外套、鮮緑の
錦紗。薄茶のスプリング・コオト。清新な麦藁帽子。ドルセイの濃厚な香気。そして爽か....
「鞄らしくない鞄」より 著者:海野十三
が、その一方を例の鞄の中へていねいに入れ始めた。長襦袢《ながじゅばん》もあるし、
錦紗《きんしゃ》もあるし、お召《めし》もあり、丸帯もあり、まるで花嫁|御寮《ごり....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
雑樹を洩れる日光に、幻の影を籠めた、墓はさながら、梢を落ちた、うらがなしい綺麗な
錦紗の燈籠の、うつむき伏した風情がある。 ここは、切立というほどではないが、巌....
「法華僧の怪異」より 著者:田中貢太郎
れは三十二三の男と三十七八の女であったが、男は大島の着流しでステッキを突き、女は
錦紗づくめの服装をしていた。 「早朝から恐縮ですが、住持様は、もうお眼覚めでしょ....
「石塀幽霊」より 著者:大阪圭吉
容貌と云いまるで瓜二つで、二人とも同じような白い蚊飛白の浴衣を着、同じような黒い
錦紗の兵児帯を締めている。名前は宏に実、年齢は二人とも二十八歳。――明かに双生児....
「春」より 著者:岡本かの子
で、奥様も、よく次から次へと作って上げる。だがその上から引掛けに黒地に赤しぼりの
錦紗羽織の肩がずっこけて居る。縫い直して上げようか、と考えながらお民は京子の歩行....
「錦紗」より 著者:犬田卯
ひょいと自分が行きつくまでにあいつを――こないだしみじみと見ておいたあのレーヨン
錦紗を、ご連中の誰かに買われてしまいはしないだろうかと考えた。ああ、バスに乗れば....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
書斎でしたが。 蚊がいますわ、と団扇で払って、丸窓を開けて風を通して、机の前の
錦紗のを、背に敷かせ、黙って枕にさせてくれたのが。…… 今更|贔屓分でいうので....
「藤の瓔珞」より 著者:田中貢太郎
十位の背のすらりとした※な女が入って来たところであった。女は裾に花模様のある黒の
錦紗御召を着ていた。憲一はその気品のある姿に圧せられるように思った。憲一は起ちあ....
「港の妖婦」より 著者:田中貢太郎
那人とも判らないような男の横顔へ往った。右のむこうの隅には濃い髪を束髪にした女が
錦紗らしい羽織の背後姿を見せて、前向きに腰をかけていたが、その束髪に挿した櫛の玉....
「水郷異聞」より 著者:田中貢太郎
の工合であろうか舟の周囲は強い電燈を点けたように明るくなって、女の縦模様のついた
錦紗のような華美な羽織がうすい紫の焔となって見えた。 「私がかわりましょうか、女....