閑寂[語句情報] » 閑寂

「閑寂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

閑寂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
疑惑」より 著者:芥川竜之介
線香がどこかで※《にお》っているような心もちがした。それほど座敷の中には寺らしい閑寂の気が罩《こも》っていた。だから私はよく早寝をした。が、床にはいっても容易に....
二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
森、林に包まれた、ゆっくりした荒れた庭で、むこうに座敷の、縁が涼しく、油蝉の中に閑寂に見えた。私はちょっと其処へ掛けて、会釈で済ますつもりだったが、古畳で暑くる....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
ンド|通りの雑踏が蜂のうなりのように聴えてくる都心|紐育下町のなかにも、こうした閑寂地がある。がいよいよルチアノも手がつけられなくなって、 「マア、これをご縁に....
火葬国風景」より 著者:海野十三
だ。そしてまたしてもグラスを手に取上げた。気が次第に落着いて来て、始めてあたりの閑寂な空気に気がついた。 八十助の座席の隣では、二人の男が物静かな会話をつづけ....
みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
むくと起きて、脚をひろげて、もう一匹よちよちと、同じような小狗は出て来ても、村の閑寂間か、棒切持った小児も居ない。 で、ここへ来た時……前途山の下から、頬被り....
かの女の朝」より 著者:岡本かの子
じこもって居る為に、かの女に近い外界からだんだんだん遠ざかってしまった。かの女は閑寂な山中のような生活を都会のなかに送って居るのだ。それが、今のところかの女に適....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
いか、お爺さんの白衣の姿はぷいと烟のように消えて、私はただひとりポッネンと、この閑寂な景色の中に取り残されました。 たった一人で、そんな山奥の瀑壺の辺に暮すこ....
甲州鎮撫隊」より 著者:国枝史郎
のという、血腥い事件も、ここ植甚の庭にいれば、他事のようにしか感じられないほど、閑寂であった。 「姐さん、よくご精が出ますね」 と、印袢纏に、向鉢巻をした留吉....
木曽の旅人」より 著者:岡本綺堂
れそうになったのには驚きましたよ。 わたしは一向おもしろくなかったが、おやじは閑寂でいいとかいうので、その軽井沢の大きい薄暗い部屋に四日ばかり逗留していました....
博物誌あとがき」より 著者:岸田国士
しろ、その「簡潔な精神」が、脂肪でふとった西欧文学のうちにあって、彼を少なくとも閑寂な東洋的「趣味」のなかに生かしていると言えば言えるだろう。「蟋蟀」「樹々の一....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
「是非会の時参ります」 鈴子が茶菓を出して、下手に坐っていた。寺とはまた違った閑寂が部屋にも、庭にも沈み、匂っていた。古びて荒れが見えてはいるが、※などにはな....
剣侠」より 著者:国枝史郎
き、初秋の夜風に吹かれて落ちる、中庭あたりの桐の葉でもあろうか、バサリ、バサリと閑寂の音を、時々立てるのが耳につくばかりで、山国の駅路の旅籠の深夜は、芭翁好みの....
褐色の求道」より 著者:岡本かの子
駅に汽車を待佗びている旅人のような気がして故国との距離感を暫く忘れたほど東洋的な閑寂な気分に引入れられた。その間、二三度伯林から汽車が着いて此の町の住宅へどやど....
北穂天狗の思い出」より 著者:上村松園
やさしい語らいと、時々人気に驚いて熊笹をゆすって逃げ去る兎くらいのものでまったく閑寂そのものである。ひる頃天狗の湯に着いた。麓を出てから二時間後のことであった。 (昭和十年)....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
ぴちぴちして、「ええのう、ええのう。」で意気が昂ったすえには、それはまことに枯淡閑寂な鰌すくいを踊りぬいて、赤い農民美術の木の盆と共に危くひっくり返りそうになっ....