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閙
「閙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
閙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「土曜夫人」より 著者:織田作之助
朝といっても、もう午ちかい。茉莉のアパートを出た京吉は、わびしい顔で河原町の雑
閙の中を歩いていた。 京吉には両親の記憶はない。兄弟も身寄りもなく、祖母の手に....
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
来の真中で棒押しをしている若者などが、異様な盛り場の夜更けを見せている。昼間は雑
閙《ざっとう》のなかに埋れていたこの人びとはこの時刻になって存在を現わして来るの....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
た上で笑いながら言った。 「日が暮れてから誰が拝みに来ようぞ。この頃は世のなかが
閙《さわ》がしいでな」 半分聞かないで、千枝松は引っ返してまた駈け出した。言い....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
ことを考えた。電車通のゴーストップで信号を待っていると、ふと、(しかし、まさか雑
閙の中で撲るわけにも行くまい)青が出て、大股で横切りながら、(いや、雑
閙であるこ....
「世相」より 著者:織田作之助
窓で蝨をつぶしている音を聴きながら、その夜を明かすと、もう暮の二十八日、闇市の雑
閙は急に増えて師走めいた慌しさであった。被っていた帽子を脱いで、五円々々。やっと....
「英本土上陸作戦の前夜」より 著者:海野十三
ンの機嫌をとるつもりで、金を握ると、ホームへ下りていった。 ホームは、ひどく雑
閙していた。何を買おうかなと思っていると、改札口の向こうで、新聞売子が、新聞を高....
「昨日・今日・明日」より 著者:織田作之助
隊におった時毎日上官の靴を磨かされていたので、経験がある。一つには、大阪で一番雑
閙のはげしい駅前におれば、ひょっとして妻子にめぐり会えるかも知れないという淡い望....
「神経」より 著者:織田作之助
び、屋号に馴染みのないバラックの飲食店が建ち、いつの間にか闇市場になっていた。雑
閙に押されて標札屋の前まで来た時、私はあっと思った。標札屋の片店を借りていた筈の....
「妖婦」より 著者:織田作之助
神様はつまらなかったが、節分の夜らしい浮々したあたりの雰囲気に惹きつけられた。雑
閙に押されながら当てもなし歩いていると、 「おい、安ちゃん」と声を掛けられた。 ....
「僕の読書法」より 著者:織田作之助
の中にいる知人を、歩道をぶらついている最中に眼ざとく見つけるなど朝飯前である。雑
閙の中で知人の姿を見つけるのも巧い。ノッポの一徳でもあろうが、とにかく視力はすぐ....
「天衣無縫」より 著者:織田作之助
に迫ったある日のこと、はたの人にすすめられて、美粧院へ行ったかえり、心斎橋筋の雑
閙のなかで、ちょこちょここちらへ歩いて来るあの人の姿を見つけ、あらと立ちすくんで....
「余齢初旅」より 著者:上村松園
二台ずつで毎日市中をみて歩いていたのであった。翌日、自動車でゆくと、大へんな雑|
閙があり、そういうところに何ということであろう餓死人が倒れたまま放っておいてある....
「銀座の朝」より 著者:岡本綺堂
す蟋蟀の一声、いずれも凉し。 六時をすぎて七時となれば、見わたす街は再び昼の熱
閙と繁劇に復りて、軒をつらねたる商家の店は都て大道に向って開かれぬ。狼籍たりし竹....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
まれたのであった。 今までは凍り着いたように静寂であった町も村も、俄に何となく
閙しくなった。鴉や雀は何物にか驚いたように啼き出した。犬も頻に吠え出した。山の方....
「俗臭」より 著者:織田作之助
、私が養ってあげる。――ふん/\と聞いていたが、急にパッと駆け出した。道頓堀の雑
閙をおしのけ、戎橋を渡り、心斎橋筋の方を走った。今の自分に女は助け舟だが土左衛門....