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「陰暗〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

陰暗の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
沼夫人」より 著者:泉鏡花
それから青芒の線を延して、左へ離れた一方に、一叢立の藪があって、夏中日も当てまい陰暗く、涼しさは緑の風を雲の峰のごとく、さと揺出し、揺出す。その上に、萱で包んだ....
わかれ」より 著者:国木田独歩
岸に近き桜よりは幾千の胡蝶一時に梢を放れ、高く飛び、低く舞う。流れの淀むところは陰暗く、岩を回れば光景瞬間に変じ、河幅急に広まりぬ。底は一面の白砂に水紋落ちて綾....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
の真中において、一刻ごとに濃くなってゆくように思われる息苦しい闇夜の中において、陰暗な空間に埋もれた星のごとくに輝き出したのである、彼の生涯を照らすべき光明が、....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
空をながめた。一面に薄暗い空は、その方面ではいっそう暗澹《あんたん》としていた。陰暗な深淵《しんえん》のようであった。クリストフは胸迫る気がした。しかしみずから....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
ように担《にな》いゆくことであった。――異常な清朗さが、突然の静明さが、もっとも陰暗な時期において彼に現われた……。それから、幻影は消え失《う》せた。そして、老....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
信じられなかった。太陽が沈んでゆくに従ってそれは、空虚な空の上にそびえてる不毛な陰暗な山のように思われてきた。そして彼女は同じ道をたどり行くには、もうその力がな....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
うな》り歌い笑っていた……。民衆の笑いこそは、言葉による出口を見出し得ないでいる陰暗な深い無数の感情を表現する、唯一の手段なのである……。 この群集は敵意をい....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
べては暗黒となる。暗い戸が開かれているのがはっきりと見える。人を引いていた人生の陰暗な馬は歩みを止める。そして人は覆面の見知らぬ男が暗やみのうちにその馬を解き放....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
いたと思って求むればはや消え失せている。一時の霽間《はれま》はすぐに移ってゆく。陰暗なひだは一進一退する。黄泉《よみじ》の風は、それらの悲壮な群集を吹き送り吹き....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
掲げなかった。それは黒い旗であった。 二 深淵《しんえん》中の会談 暴動の陰暗な教育を受くること満十六年に及んだので、一八四八年六月は一八三二年六月よりも....
絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
ではなかったのであろうか。案の状杉江は、六十年前の心中話しに遡って行って、その時陰暗の中でお筆が勤めていた、或る一つの驚くべき役割を暴露したのであった。 「そう....
二都物語」より 著者:佐々木直次郎
は、立去って再び降りて行った。そして、日光よりももっとこの場にはふさわしく見える陰暗がこの場面に次第に募って来た。 その葡萄酒は赤葡萄酒であって、それがこぼれ....
オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
ない人達にとると、何んとなくそれが、欝然とした兆のように考えられて来る。 何か陰暗のうちに、思いも付かない黙闘が行われているのではないか――そう考えると、はや....
涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
の濃い暗紫色の陰影は千人岩の頭のうえまでものびていた。そしてはるかの谷にはすでに陰暗な夜の物影がしずかにはいずっていた。自分たちはそのころ漸く岩小屋にかえりつい....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
た豊原の夜景はまるで緑野の中の正しい灯の碁盤目であった。 私は南国人だ。北方の陰暗、深刻、そうした私の芸術に欠けているものをこそ求めて、私はこの北方に来ること....