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陰湿
「陰湿〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陰湿の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「筧の話」より 著者:梶井基次郎
ていた。この径ではそういった矮小《わいしょう》な自然がなんとなく親しく――彼らが
陰湿な会話をはじめるお伽噺《とぎばなし》のなかでのように、眺められた。また径の縁....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
につけ動けなくなってしまった。そこには、暖水をこのむ大|蟻《あり》が群れている。
陰湿の、群葉のしたは湯気のような沙霧《ヘーズ》だ。
「さあ、足を踏んばって……、....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
な階段が一つあって、そこから漆のような闇が覗いている。永年外気に触れたことのない
陰湿な空気が、さながら屍温のようなぬくもりと、一種名状の出来ぬ黴臭さとを伴って、....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
樺谷へと下りた、偃松が尽きると、春の低原地に見られるような、生々しい緑の草葉が、
陰湿の土を包んで、その傾斜が森林の中まで落ちている、草ばかりではない、小さい切石....
「長崎の印象」より 著者:宮本百合子
なっているのだが、私共は大して心を打たれなかった。後に迫って山を負っているため、
陰湿だ。それに昔の支那――明人の建築には思いがけず木材など細いのが使用されてい、....
「男ぎらい」より 著者:豊島与志雄
う。そんなことをしなければならないほど、股倉が、……なんと言ったらよいか、まあ、
陰湿なのでしょう。そうです。男の股倉はみんな
陰湿なのです。だから、いつも両股をひ....
「猫捨坂」より 著者:豊島与志雄
で、両側には雑草が生え、石炭灰や塵芥がつもり、陶器の破片が散らばっている。全体が
陰湿な感じだ。仔猫や病み猫などがしばしば捨てられている。坂の名は何というのか分ら....
「血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
は、父の敵の嫡宗、恨みがござる! 果たし合いましょうぞ!」 と、例の、嗄れた、
陰湿とした声で云った。 難剣「逆ノ脇」 左門は急に驚いたように、 「貴....
「魔都」より 著者:久生十蘭
口説の事
安南国皇帝宗竜王は自分の寝台の上で眼を覚ました。
自分は暗い
陰湿なところを長い間苦しい彷徨をつづけていたような気がするのに、見ると自分はいつ....
「植物一日一題」より 著者:牧野富太郎
》)の『菌譜《きんぷ》』には、毒菌類の中にニギリタケを列して「形状一ナラズ好ンデ
陰湿ノ地ニ生ズ其ノ色淡紅茎白色ナリ若《モ》シ人コレヲ手ニテ握トキハ則チ痩セ縮ム放....
「郷愁の詩人 与謝蕪村」より 著者:萩原朔太郎
たれどき》や古館《ふるやかた》 五月雨頃《さみだれごろ》の、仄暗《ほのぐら》く
陰湿な黄昏《たそがれ》などに、水辺に建てられた古館があり、橘《たちばな》の花が侘....
「上野」より 著者:永井荷風
勝概の地である。然しわたくしの知人で曾てこの地に卜居した者の言う所によれば、土地
陰湿にして夏は蚊多く冬は湖上に東北の風を遮るものがないので寒気甚しくして殆ど住む....
「秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
木に遮られて、原は眼に入らない。 三角点から黒木の繁った細い山稜を少し登って、
陰湿な土に印した熊の足跡を踏みながら笹の中へ下り込む。所々木立は薄くなるが深い笹....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
なかった荷物の連中は下から見上げて笑っている。また河に下りた、そして朽葉の積った
陰湿な崖腹に白根葵の大きな花を見出した時には、爪先に引懸った小枝と共に満腔の不平....
「大岡越前」より 著者:吉川英治
は、その市十郎と、お縫との、ふたりを呪咀の像にえがいて身も心も炎にした。 この
陰湿な土蔵二階で、厭な厭な心にもない夜を、あの醜男の化物刑部のもてあそびになって....