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陰鬱
「陰鬱〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陰鬱の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
す。」
田代君は椅子《いす》に腰を下すと、ほとんど物思わしげなとも形容すべき、
陰鬱な眼つきになりながら、私にも卓子《テーブル》の向うの椅子へかけろと云う手真似....
「路上」より 著者:芥川竜之介
い勢いでふり払いながら、それでも指だけは間違いなく、この病室の空気にふさわしい、
陰鬱な曲を弾《ひ》きやめなかった。
三人は一種の無気味《ぶきみ》さを感じて無言....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
枝が、むらむらと、互に鬩《せめ》ぎ合った上には、夏霞《なつがすみ》に煙っている、
陰鬱な山々の頂《いただき》があった。そうしてそのまた山々の空には、時々|鷺《さぎ....
「藪の中」より 著者:芥川竜之介
喘《あえ》ぎ喘ぎ云うのです。わたしはその時猛然と、男を殺したい気になりました。(
陰鬱なる興奮)
こんな事を申し上げると、きっとわたしはあなた方より残酷《ざんこ....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
その内に泰さんは勇気を振い起したと見えて、今まで興奮し切っていた反動か、見る見る
陰鬱になり出したお敏に向って、「その間の事は何一つまるで覚えていないのですか。」....
「或る女」より 著者:有島武郎
、自分をさげすみ果てたような絶望的な怒りの色を口びるのあたりに宿して、黙ったまま
陰鬱《いんうつ》に立っていた。今までそわそわと小魔《しょうま》のように葉子の心を....
「或る女」より 著者:有島武郎
にいうともう苦しそうに目をつぶってほろほろと大粒の涙をこぼすのだった。
倉地は
陰鬱《いんうつ》な雨脚《あまあし》で灰色になったガラス窓を背景にして突っ立ちなが....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
くつかの顔は、暗い停車場のプラットフォームから私たちに名残《なご》りを惜しんだ。
陰鬱な津軽海峡の海の色も後ろになった。東京まで付いて来てくれた一人の学生は、お前....
「星座」より 著者:有島武郎
入っていて、いつも以上に不機嫌になっていた。兄は病気の加減もあったのかことさらに
陰鬱《いんうつ》だった。若いくせに喘息《ぜんそく》が嵩《こう》じて肺気腫の気味に....
「電気風呂の怪死事件」より 著者:海野十三
「非常線は張ってある。本署へ行けばきっと捕っているに違いないよ!」 先刻までの
陰鬱そうな顔色にひき代えて、また何と云う暢気さだろう! 3 だが、赤....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
とにしました。このことは電報の中に書いて置いたのです。 一方、兄の急死によって
陰鬱さを増した赤耀館では、雇人が続々と暇を願い出ました。嫂も百合子も、盛んに慰留....
「恐しき通夜」より 著者:海野十三
すように云ったのは、赭ら顔の、でっぷり肥った川波船二大尉だった。窓の外は真暗で、
陰鬱な冷気がヒシヒシと、薄い窓|硝子をとおして、忍びこんでくるのが感じられた。 ....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
をうかべて聴き、馬の蹄は石の鋪道を蹴立てて走っている。それらの中を一人の頑丈な、
陰鬱な大男が沈黙と絶望の冷やかな足取りで歩きながら、こうした人々の心に不快と、忿....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
又は気分の変更と申すものかも知れませぬ。現にあの岩屋にしても、最初は何やら薄暗い
陰鬱な処のように感ぜられましたが、それがいつとはなしにだんだん明るくなって、最後....
「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
の日の午後には、彼はこの丘をあんなに楽しげに越えてきたのだった。時刻も彼と同様、
陰鬱だった。はるか下のほうには、タッパン・ジーの水が暗く、ぼんやり、荒寥とひろが....