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陽春
「陽春〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陽春の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「季節の植物帳」より 著者:佐左木俊郎
《ひた》って来ます。また、それとは反対に、春になっても、福寿草の花が咲かないと、
陽春《ようしゅん》の季節を迎えた気分にはなれないのです。 ○ 福....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
朧夜の月の光の下に、この町の堂母なるサン・ルフィノ寺院とその前の広場とが、滑かな
陽春の空気に柔らめられて、夢のように見渡された。寺院の北側をロッカ・マジョーレの....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
実話ナドヲもでるニシタモノデハゴザイマセン。 「深夜の市長」に始めて会ったのは、
陽春とは名ばかりの、恐ろしく底冷えのする三月二十九日の夜のことだった。 ラジオ....
「赤外線男」より 著者:海野十三
出した。忌わしい第一、第二の犠牲者を、昨日一昨日に送ったとは思えないほど、麗かな
陽春の空だった。 彼は先ず、警視庁の大きな石段をテクテク登っていった。 「どう....
「柿色の紙風船」より 著者:海野十三
に水色に緑というような強烈な色彩の蝋紙が、あたりに散ばっていた。何のことはない、
陽春四月頃の花壇の中に坐ったような光景だった。向うの隅で、麻の糸つなぎをやってい....
「小田原陣」より 著者:菊池寛
月五日、秀吉は本営を箱根から、湯本早雲寺に移した。山の中とはことかわり、溌溂たる
陽春の気は野に丘に満ち、快い微風は戦士等の窶れた頬を撫でて居る。ともすれば懶い駘....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
月なみ、三人立ち五人立ちの武者絵凧が、或は勝鬨をあげ、或は闘いを挑む様は、これや
陽春第一の尖兵戦、江戸ッ児はかくして三百六十五日その負けじ魂を磨きつつあるのであ....
「天馬」より 著者:金史良
とぼ歩き出した。やはり突き当ったり、くねりくねり曲ったりしつつ、ようやく坂の上、
陽春館というそれも青ペンキ塗りの大門の前まで辿り着いた。辺り一面、数百千と坂をな....
「文士としての兆民先生」より 著者:幸徳秋水
忠の人格の発露であった。是れ先生の文章の常に真気惻々人を動かす所以であって、而も
陽春白雪利する者少き所以である。而して単に其文字から言っても、漢文の趣味の十分に....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
度快方に赴いて暫く杜を悦ばせた。けれども年が明けるとともにまた容態が悪化し、遂に
陽春四月に入ると全く危篤の状態に陥った。ミチミが他界したのは四月十三日のことであ....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
がうるさくて堪らない。 泥酔者は電車の中で嘔吐を吐く、電車のみでなく道路でさえ
陽春にはどれ位多くの嘔吐が一夜に吐き散らされているか知れない。そしてそれを見ると....
「勉強記」より 著者:坂口安吾
であった。この世に顔の数ある中で、温顔の中の温顔である。常に適度の微笑をふくみ、
陽春の軟風をみなぎらし、悠々として、自在である。声はあくまでやわらかく、酔にまぎ....
「競漕」より 著者:久米正雄
まだ水煙が罩めてうすら寒かった。北が晴れると風が吹いて川面に波を立てた。だんだん
陽春の近づくにつれて隅田を下る船の数が増して行く。そしてこのごろではそれを縫って....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
四 金石街道の松並木、ちょうどこの人待石から、城下の空を振向くと、
陽春三四月の頃は、天の一方をぽっと染めて、銀河の横たうごとき、一条の雲ならぬ紅の....
「私の履歴書」より 著者:井上貞治郎
もしない、それは四月十二日だった。上野公園では咲き誇る桜の下で、花見客がうかれる
陽春を、私はうすぎたない冬服姿で、もらった十銭玉が汗をかくほどにぎりしめ、赤げっ....