陽炎[語句情報] » 陽炎

「陽炎〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

陽炎の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
蜃気楼」より 著者:芥川竜之介
の見える場所は彼等から一町ほど隔っていた。僕等はいずれも腹這《はらば》いになり、陽炎《かげろう》の立った砂浜を川越しに透かして眺めたりした。砂浜の上には青いもの....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
と羨しそうな眼を挙げて、その若者を眺めたが、やがて彼等の群を離れて、たった一人|陽炎《かげろう》の中を河下《かわしも》の方へ歩き出した。 二 河下の方へ歩....
将軍」より 著者:芥川竜之介
した眼に、広い野原を眺めまわした。もう高粱《こうりょう》の青んだ土には、かすかに陽炎《かげろう》が動いていた。 「それもまた大成功さ。――」 中村少佐は話し続....
婦系図」より 著者:泉鏡花
ましく、顔の色とおなじような、毛巾を便にして、姿と一緒にひらひらと動かすと、畳に陽炎が燃えるようなり。 「御無沙汰を致しまして済みません。奥様もお変りがございま....
春昼」より 著者:泉鏡花
だったそうにございますよ。 豆を植えようと、まことにこう天気の可い、のどかな、陽炎がひらひら畔に立つ時分。 親仁殿、鍬をかついで、この坂下へ遣って来て、自分....
かんかん虫」より 著者:有島武郎
声がふと淋しくなったと思ったので、振向いて見ると彼は正面を向いて居た。波の反射が陽炎の様にてらてらと顔から半白の頭を嘗めるので、うるさ相に眼をかすめながら、向う....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
々と汐が満ちたのである。水は光る。 橋の袂にも、蘆の上にも、随所に、米つき虫は陽炎のごとくに舞って、むらむらむらと下へ巻き下っては、トンと上って、むらむらとま....
陽炎」より 著者:泉鏡花
った。 住居は本郷。 江東橋から電車に乗ろうと、水のぬるんだ、草萌の川通りを陽炎に縺れて来て、長崎橋を入江町に掛る頃から、どこともなく、遠くで鳴物の音が聞え....
茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
うに、幾人となく女が舞込む。 ――夜、その小屋を見ると、おなじような姿が、白い陽炎のごとく、杢若の鼻を取巻いているのであった。 大正七(一九一八)年四月....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
糸が透いて、膝へ紅裏のにじんだ小袖を、ほとんど素膚に着たのが、馬ふんの燃える夜の陽炎、ふかふかと湯気の立つ、雁もどきと、蒟蒻の煮込のおでんの皿盛を白く吐く息とと....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
動車が大昆虫のごとく跳梁奔馳する。瓦礫、烟塵、混濁の巷に面した、その中へ、小春の陽炎とともに、貸本屋の店頭へ、こうした娘姿を映出すのは――何とか区、何とか町、何....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
った。 その時打向うた卓子の上へ、女の童は、密と件の将棋盤を据えて、そのまま、陽炎の縺るるよりも、身軽に前後して樹の蔭にかくれたが、枝折戸を開いた侍女は、二人....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
勧めるようですわ。山の形も柔かな天鵞絨の、ふっくりした括枕に似ています。そちこち陽炎や、糸遊がたきしめた濃いたきもののように靡くでしょう。雲雀は鳴こうとしている....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
ある。 と、この一廓の、徽章とも言つべく、峰の簪にも似て、あたかも紅玉を鏤めて陽炎の箔を置いた状に真紅に咲静まったのは、一株の桃であった。 綺麗さも凄かった....
河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
の小僧と、馬に木茸の坊さん一人。これが秋の暮だと、一里塚で消えちまいます、五月の陽炎を乗って行きます。 お婆さんが道祖神の化身なら、この子供には、こんがら童子....