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「隣室〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

隣室の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
《あ》げの毛が、かすかに耳の根をぼかしたのも見える。 この姿見のある部屋には、隣室の赤児の啼《な》き声のほかに、何一つ沈黙を破るものはない。未《いまだ》に降り....
或る女」より 著者:有島武郎
耳もかさずに、思慮深い貴女《きじょ》のような物腰で女中のほうに向いていった。 「隣室《となり》も明いていますか……そう。夜まではどこも明いている……そう。お前さ....
或る女」より 著者:有島武郎
った。 「貞《さあ》ちゃんなんですその失礼は。出ておいでなさい」 葉子は激しく隣室に向かってこう叫んだ。隣室から貞世のすすり泣く声が哀れにもまざまざと聞こえて....
国貞えがく」より 著者:泉鏡花
と言った。 が、鰯《いわし》の催促をしたようで。 「今、焼いとるんや。」 と隣室《となり》の茶の室《ま》で、女房の、その、上の姉が皺《しな》びた声。 「なん....
野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
らなく一度にこみ上げてくる。口へは手拭を噛んで、涙を絞った。どれだけ涙が出たか、隣室の母から夜が明けた様だよと声を掛けられるまで、少しも止まず涙が出た。着たまま....
婦系図」より 著者:泉鏡花
学校へ出ても、別に仔細は無かったろうに。 さて、夫人は、谷屋の手代というのを、隣室のその十畳へ通したらしい、何か話声がしている内、 「早瀬さん――」 主税は....
顔の美について」より 著者:伊丹万作
の心に触れてくるのである。 また精神的教養は人間の声音をさえ変える。 我々は隣室で話す未知の人の声を聞いてほぼどの程度の教養の人かを察することができる。 ....
鷭狩」より 著者:泉鏡花
二三枚|覗かれた――と思う。……そのまま忍寄って、密とその幕を引なぐりに絞ると、隣室の障子には硝子が嵌め込になっていたので、一面に映るように透いて見えた。ああ、....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
も目をしばたたいたが、 「ヤ、あの騒ぎわい。」 と鼻の下を長くして、土間|越の隣室へ傾き、 「豪いぞ、金盥まで持ち出いたわ、人間は皆裾が天井へ宙乗りして、畳を....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
えてしまいましたがね。」 「どこのです。」 「ここの。」 「ええ。」 「それとも隣室だったかしら。何しろ、私も見た時はぼんやりしてさ、だから、下に居なすった、お....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
すもの。」 「婦女子の言です。」 と医師は横を向く。小松原は、片手を敷布の上、隣室へ摺寄る身構えで、 「水に縁と……仰有ると?」 「あれは貴下、何ですわ、つい....
狂女」より 著者:秋田滋
の幾日かのあいだは何ごともなく過ぎた。その将校には、前もってこの家の主婦が病気で隣室に寝ていることが耳に入れてあったので、彼のほうでも、そのことは別に気にもとめ....
白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
が憎いのね。――ああ、信や(女中)二階で手が鳴る。――虫が煩い。この燈を消して、隣室のを点けておくれな。」 その間、頸脚が白かった。振仰向くと、吻と息して、肩....
活人形」より 著者:泉鏡花
釈して、二階を教え、低声にて、「三番室。」 四番室の内に忍びて、泰助は壁に耳、隣室の談話声を聞けば、おのが跟けて来し男の外になお一人の声しけり。 「お前、御苦....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
中に拙者の名前がドクトル井上とありたるために日本の医者なりと誤解せられ、ある日、隣室に一時の眩瞑を起こしたる病人が起こり、拙者に向かい、「君は日本のドクトルとい....