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隻眼
「隻眼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
隻眼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「村の怪談」より 著者:田中貢太郎
しかった。甚内は襖の隙から覗きたいと思って、注意すると小さな穴があったので其処へ
隻眼をやった。髪の黒い※《きれい》な女の寝ている枕頭に狸の医師が坐って、その手の....
「食魔」より 著者:岡本かの子
いる。鼈四郎は病友がいった通り、彼が死んでからも顔を描き上げようとはしなかった。
隻眼を眇にして睨みながら哄笑している模造人面疽の顔は、ずった偶然によって却って意....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ど私財を蕩尽してしまいました。それなので、今後の維持のためには、どうあってもあの
隻眼を押してまで、津多子様は再び脚光を浴びなければならなくなったのです。恐らくあ....
「野狐」より 著者:田中英光
、ナンノ為ニ野狐ニ堕ツ。不昧因果、ナンノ為ニ野狐ヲ脱スル。モシ、者裏ニ向ッテ、一
隻眼ヲ著得セバ、スナワチ、前百丈(野狐ノコト)風流五百生ヲカチ得タルヲ知リ得ン。....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
んだものだ。まず、勢いをつけて……というわけ。 「こいつらア! あの丹下左膳てえ
隻眼隻腕の化け物は、なるほど世の中に役にたたぬ代物じゃが、しかし、農工商をいじめ....
「地は饒なり」より 著者:宮本百合子
はいられない。真面目な科学者は、彼の片目を盲《めしい》にした爆発物を、なお残りの
隻眼で分析する勇気と、熱愛と、献身とを持つ」 彼女は確かに失望もし、情けない恥....
「高浜虚子著『鶏頭』序」より 著者:夏目漱石
触れるとも、人生の根元に徹するとも評して居る。成程《なるほど》吾々凡人より高く一
隻眼《いっせきがん》を具して居ないとあんな御手際《おてぎわ》は覚束《おぼつか》な....
「蒲生氏郷」より 著者:幸田露伴
藤次郎か、おぬしが予ねて聞いた木下藤吉か、と互に面を見合せて重瞳《ちょうどう》と
隻眼と相射った時、ウム、面白そうな奴、話せそうな奴、と相愛したことは疑無い。だが....
「階級闘争の彼方へ」より 著者:与謝野晶子
また近来の官憲の中の少壮分子は不徹底ながらも民主思想を理解し、世界の労働問題に一
隻眼を開いている所から、資本家の極端な利己心に憤慨し、労働者の境遇に同情するとい....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
る。またの日にお越しなさい」
ゲッ! というような音を立てて、丹下左膳と名乗る
隻眼の侍、咽喉《のど》で笑った。
「またの日はよかったな。道場破りにまたの日もい....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
むっくり起きあがったのは、なんと! 大たぶさがぱらり顔にかかって、見おぼえのある
隻眼隻腕の、痩せさらばえた浪人姿……。
五
「これは、これは、丹下の殿様。お....
「江口渙氏の事」より 著者:芥川竜之介
センをやりはしない。作の力、生命を掴むばかりでなく、技巧と内容との微妙な関係に一
隻眼を有するものが、始めてほんとうの批評家になれるのだ。江口の批評家としての強味....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
――で、図面を指さした。片眼の上瞼がダラリと下がって、ほとんど瞳をおおうていて、
隻眼のように見えている。それは醜い老女であった。「りっぱなお屋敷でございますわい....
「山寺の怪」より 著者:田中貢太郎
ゆくともなしに仏壇の上の仏像に往った。仏像の左の眼は潰れていた。武士は未だかつて
隻眼の仏像を見たことがなかったし、またあるべきはずもないと思ったので、眼のせいで....
「家庭料理の話」より 著者:北大路魯山人
に終始した、なんでもないものである。 仔細に観察するならば、別にその老女中に一
隻眼があっての仕事ではなく、もとより、その料理が真実の賞賛に価するというものでも....