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雑沓
「雑沓〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
雑沓の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「浅草公園」より 著者:芥川竜之介
に吊《つ》った、火のともらない大提灯《おおじょうちん》。提灯は次第に上へあがり、
雑沓《ざっとう》した仲店《なかみせ》を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは....
「路上」より 著者:芥川竜之介
《なまよい》の大井《おおい》を連れてこの四つ辻を向うへ突切るには、そう云う周囲の
雑沓《ざっとう》と、険呑《けんのん》な相手の足元とへ、同時に気を配らなければなら....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
の大群衆も、前面から襲ってきた毒瓦斯に捲きこまれて、一溜もなく、斃れてしまった。
雑沓の巷は、五分と経たぬ間に、無人郷に変ってしまった。その荒涼たる光景は、関東大....
「間諜座事件」より 著者:海野十三
ピエル座第9回公演――と旗が出ている間諜座の前だ。R区は、いつもと、些とも変らぬ
雑沓だった。 しばらくウィンドーの裸ダンスの写真を、涎を垂らさんばかりの顔つき....
「河明り」より 著者:岡本かの子
社長はこんな冗談を云った。 官庁街の素気なく白々しい建物の数々。支那街の異臭、
雑沓、商業街の殷賑、私たちはそれ等を車の窓から見た。ここまで来る航行の途中で、上....
「灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
碌頭巾の好い若い衆が気が抜けたように茫然立っていた。刺子姿の消火夫が忙がしそうに
雑沓を縫って往ったり来たりしていた。 泥塗れのビショ濡れになってる夜具包や、古....
「見えざる敵」より 著者:海野十三
一部始終を眺めて暮らしているのだった。彼の前には、紛れもなく賑かな上海、南京路の
雑沓が展開しているのだった。それも暁の南京路の光景から、明る陽をうけた繁華な時間....
「毒瓦斯発明官」より 著者:海野十三
のながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓をのぞきこんでいた。 南京路の
雑沓は、今が真盛りであった。 金博士の視線は、さっきから、飾窓の小棚にのせられ....
「故郷」より 著者:井上紅梅
中掲げられた影像の前には多くの供え物をなし、祭器の撰択が八釜しく行われ、参詣人が
雑沓するので泥棒の用心をしなければならぬ。わたしの家には忙月が一人きりだから手廻....
「荘子」より 著者:岡本かの子
来た。彼等は世相に対する不安と興味とに思わず興奮の叫び声を挙げた。荘子はそういう
雑沓には頓着なく櫟社の傍からぬっと空に生えている櫟の大木を眺め入って居た。その櫟....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
待ち佗びるように、日曜が来るのを首をながくして待った。その日は、教会が絶えず人で
雑沓するからである。 教会のなかがじめじめしているために、体がいよいよ弱くなっ....
「女の話・花の話」より 著者:上村松園
るところではございませんが、花はほんとうに幽邃で、境地はいたって静かですし少しも
雑沓などは致しませんから、ゆっくりした気もちで半日遊んでいますと、これこそほんと....
「一寸怪」より 著者:泉鏡花
ったので、転居をするような仕末、一時は非常な評判になって、家の前は、見物の群集で
雑沓して、売物店まで出たとの事。 これと似た談が房州にもある、何でも白浜の近方....
「越年」より 著者:岡本かの子
、明子も自分からは差控えていたことを話した。 「私このごろ眼がまわるのよ。始終|
雑沓する人の顔を一々|覗いて歩くでしょう。しまいには頭がぼーっとしてしまって、家....
「鉄の処女」より 著者:大倉燁子
片一方を発見すれば、それによって事件の糸口がたぐり出せるかも知れない。 仲店の
雑沓の中を、夫人は黙々として考えながら歩いた。私も無言で彼女に遅れまいと足早につ....