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雑鬧
「雑鬧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
雑鬧の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
取り囲まれたうつろな死骸《しがい》のように、がらんと静まり返って、騒々しい桟橋の
雑鬧《ざっとう》の間にさびしく横たわっている。
水夫が、輪切りにした椰子《やし....
「或る女」より 著者:有島武郎
声が眠く田圃《たんぼ》のほうから聞こえて来た。休暇でないせいか、思いのほかに人の
雑鬧《ざっとう》もなく、時おり、同じ花かんざしを、女は髪に男は襟《えり》にさして....
「猫町」より 著者:萩原朔太郎
をかけた主人が坐って、黙って熱心に仕事をしていた。 街《まち》は人出で賑やかに
雑鬧《ざっとう》していた。そのくせ少しも物音がなく、閑雅にひっそりと静まりかえっ....
「ケーベル先生」より 著者:夏目漱石
また》に棄《す》てられた希臘《ギリシャ》の彫刻に血が通い出したようなものである。
雑鬧《ざっとう》の中に己《おの》れを動かしていかにも静かである。先生の踏む靴の底....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
主の祈を念仏のように繰返し繰返しひたすらに眼の前を見つめながら歩いて行った。この
雑鬧な往来の中でも障碍になるものは一つもなかった。広い秋の野を行くように彼女は歩....
「武装せる市街」より 著者:黒島伝治
出発した。 日没後、なお、一と時は、物が白く明るく見える、生暖い晩だ。 昼の
雑鬧と黄色い灰のようなほこりはよう/\おさまった。 無数にうろついていた乞食の....
「法窓夜話」より 著者:穂積陳重
く》の姿で、当時世界の文化の中心と称せられておったギリシアのアテネの市中、群衆|
雑鬧《ざっとう》の各処に現れて、その独特会話法に依って自負心の強い市民を教訓指導....
「大脳手術」より 著者:海野十三
狽する声を後に残して、外に飛出した。行先はもちろんH街であった。 H街はひどく
雑鬧していた。はげしい人波をかきわけ、或いは押戻されつして、私は何回となく求むる....
「のろのろ砲弾の驚異」より 著者:海野十三
住居が、どこにあるか、知っている人は、ほんの僅かである。人はよく、博士が南京路の
雑鬧の中を、擦れ切った紫紺色の繍子の服に身体を包み、ひどい猫脊を一層丸くして歩い....
「第四次元の男」より 著者:海野十三
し、せいせいとした気持になって糊のかたくついた浴衣を身体にひっかけ、宵の新宿街の
雑鬧の中にさまよい出たのであった。どういうものか、人間というやつはすぐこうしたち....
「半日ある記」より 著者:寺田寅彦
積み上げたるに落葉やゝ積りて鳥の糞の白き下には小笹生い茂りて土すべりがちなるなど
雑鬧の中に幽趣なるはこの公園の特徴なるべし。西郷像の方へ行きたれども書生の群多く....
「狼疾記」より 著者:中島敦
らずに、あくせくと世事に心を煩わして過ごし、(いや、その途中で、一度か二度位は、
雑鬧《ざっとう》の中で立止って思索する男のように、ひょいと自己の真の位置に気付く....
「アド・バルーン」より 著者:織田作之助
瀬戸物町に陶器作りの人形が出て、年に一度の賑いで、私の心も浮々としていたが、その
雑鬧の中で私はぱったり文子に出くわしました。母親といっしょに祭見物に来ていたので....
「山吹」より 著者:泉鏡花
はじめて心付く)いや、(と軽く言う。間)……先生は弱りました。が、町も村も大変な
雑鬧ですから、その山の方へ行ってみます。――貴女は、(おなじく眠れるがごとき目の....
「病牀苦語」より 著者:正岡子規
うじま》の花見に行くというので、母が共に行かれたことである。花盛りの休日、向島の
雑鬧《ざっとう》は思いやられるので、母の上は考えて見ると心配にならんでもなかった....