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雨足
「雨足〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
雨足の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「土曜夫人」より 著者:織田作之助
しながら、あてもなくトボトボと歩いていたが、しまいには話の種もつきて、黙々と白い
雨足を見つめながら、惰性のように歩いていた。 芳子は、京吉が祇園荘へ行く自分を....
「田原坂合戦」より 著者:菊池寛
口から放つ砲弾も、盛んに後塁に落下して居る。 夜は既に明け放れて山霧全く霽れ、
雨足も亦|疎らになった。官軍は死屍を踏んで田原坂に進み、更に一隊は、敵塁の背後に....
「蟹工船」より 著者:小林多喜二
寒い雨がまだ止んでいなかった。四囲にもりもりと波がムクレ上ってくると、海に射込む
雨足がハッキリ見えた。それは原始林の中に迷いこんで、雨に会うのより、もっと不気味....
「道標」より 著者:宮本百合子
覚的にはっとさせるようなものをもっているのだった。
また伸子が窓の前へ立って、
雨足のつよい夜の鋪道を見おろしているところへ、うしろのドアがあいた。
「なんだぶ....
「悲しめる心」より 著者:宮本百合子
な男の手によって、頭より先に静かに――静かに下って行く。 降りそそぐ小雨の銀の
雨足は白木の柩の肌に消えて行く。 スルスル……、スルスル、麻繩は男の手をすべる....
「雨が降って居る」より 著者:宮本百合子
細い
雨足で雨が降って居る。 薄暗い書斎の机の前にいつもの様に座って、私は先ぐ目の前....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
のは、特殊な古い形容であって、多少そのできた年代をも示している。それは斜めの長い
雨足を lansquenets(十五六世紀頃のゼルマン歩兵)の密集した斜めの槍《....
「市川九女八」より 著者:長谷川時雨
―」 九女八は、まだ、素足《すあし》の引っこみの足どりの幻影《かげ》を、庭の、
雨足のなかに追いながら、 「成田屋《ししょう》のうちの庭は、あすこらあたりに、大....
「あなたも私も」より 著者:久生十蘭
いただいて……」 サロン・バアのピアノは、ショパンの『雨だれ』になった。氷雨の
雨足にテンポをあわせるように、だるい調子で奏いている。由良は眉の間に嫌皺《いやじ....
「夜光虫」より 著者:織田作之助
で、その娘が来た方向へ、眼を光らせた。 そして、暗がりの中に不気味に光っている
雨足を透して、じっと視線を泳がせていると、ふと黒く蠢いた気配がした。 はっと思....
「夜の構図」より 著者:織田作之助
はふと眉を翳らせて、それが癖の放心しているような虚ろな眼をあげて、きょとんと白い
雨足を見ていたが、一つの気分に永く閉じこもることの出来ない信吉はすぐ軽佻浮薄な笑....
「小説 円朝」より 著者:正岡容
うニッコリ圓朝は、見得を切った。 「…………」 やっぱり花四天のよう、ニュッと
雨足上げて転がったままで萬朝はいた。 何ともいえない主従睦み合っているこの景色....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
りたあ言いながらあの様でどうして――? はて、こいつあちょっと合点が行かねえ。」
雨足の白い軒下をじいっと凝視《みつ》めて、藤吉は持駒で頤を撫でた。 「合点がいか....
「二つの松川」より 著者:細井吉造
じて天幕《テント》を張り終わったころ、可憐《かれん》な小品的野営地はもうもうたる
雨足の裡《うち》にすっかり屏息《へいそく》してしまったのである。しかし野営地まで....
「一ノ倉沢正面の登攀」より 著者:小川登喜男
に紫の電光が閃いて、激しい雷鳴がうす気味悪い反響を周囲の岩壁にたたき附ける。強い
雨足は岩に当って白い沫をあげながら、無数の細い滝となって乱れ落ちて行く。身を寄せ....