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「雲脚〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

雲脚の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
夜明け前」より 著者:島崎藤村
ただ一人黙然として、古い壁にかかる達磨の画像の前にすわりつづけた。 なんとなく雲脚の早さを思わせるような諸大名諸公役の往来は、それからも続きに続いた。尾張藩主....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
の壁には淡い月がさして来ていて、庭に植えてある柿の梢も暗い。峠の上の空を急ぐ早い雲脚までがなんとなく彼の心にかかった。 最初、今度の軍役に使用される人馬は慶安....
光と風と夢」より 著者:中島敦
風はまだ強い。直ぐ足下から拡がる大傾斜の彼方、鉛色の海を掠《かす》めて西へ逃げる雲脚の速さ。雲の断目《きれめ》から時折、暁近い鈍い白さが、海と野の上に流れる。天....
播州平野」より 著者:宮本百合子
色の雨雲が強い風に吹きたてられて、むら立ちながら山の峯々を南から北へ走っている。雲脚が迅く濃くなるたびに、トタン屋根に白いしぶきを立てて沛然《はいぜん》と豪雨が....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
その草とも思われなく房々と大きやかに成長して、蔓の力もあなどりがたくなりました。雲脚が迅くなって、黒い雲が地平線に現れるとき、樫は迫った自然の恐怖的愛撫を予感し....
なよたけ」より 著者:加藤道夫
って立っている。……もう一度最も烈しい電光。……雷鳴なし。 やがて、…… 烈しい雲脚が次第次第に薄らいで行く。……あたりがだんだんだんだん明るくなって来た。……....
五右衛門と新左」より 著者:国枝史郎
垣を外に少しかこひて、土間をいかにも/\美しく平させ、無双の蘆屋釜を自在にかけ、雲脚をばこしらへて、茶椀水差等をば、いかにも下直なる荒焼をぞもとめける。其外何に....
谷にうたう女」より 著者:小川未明
ている道は、かすかにくさむらの中に消えていました。そして、山の頂は灰色に曇って、雲脚が、速かったのです。 村じゅうが、大騒ぎをして、長吉をさがしたけれど、つい....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
で、山には一日一度ずつ、きっとこんな疾風雲が通るのです」 と、いった。 だが雲脚に追われて、おのずと足も急いで来ると、やがて学文路の宿の入口あたりで、彼方か....
三国志」より 著者:吉川英治
る黄塵の煙幕をひいて、魏の大軍がひたひたとこれへつめよせて来る。 ――が、その雲脚の如き勢も、城の間近まで来たかと思うと、ぴたと止って、ただ遠く潮騒に似た喊声....
私本太平記」より 著者:吉川英治
である。どこか遠国で大荒れをしているのだろう。近畿いったいは強風だった。都の朝も雲脚の迅い明滅をしきりにして、加茂川の戦ぎがそのまま大内裏の木々をも轟々とゆすっ....