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「零し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

零しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
ひら未練の情がうす紅色に冴え残った。翁は意識にこれを認めると、ぽたりぽたりと涙を零した。 翁は、螺の腹にえび蔓の背をしたまま旅の餉《かれいい》を背負い、杖を手....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
た。 薫は腹這いから立ち上った。腰だけの水泳着の浅いひだから綺麗な砂をほろほろ零しながらいい体格の少年の姿で歩き出した。小初はしばらくそれを白日の不思議のよう....
河明り」より 著者:岡本かの子
の店先に寄り衣裳の流行の様子を見たり、月光石の粒を手に掬って、水のようにさらさら零しながらも、それは単なる女の習性で、心は外に漠然としたことを考えていた。 「こ....
怪談牡丹灯籠」より 著者:三遊亭円朝
上げて物が云われず、新三郎の膝に両手を突いたなりで、嬉し涙を新三郎の膝にホロリと零しました。これが本当の嬉し涙です。他人の所へ悔みに行って零す空涙とは違います。....
」より 著者:池谷信三郎
わ。あなたは私たちの結婚式に何を送ってくださること? 突然彼女がポロポロと涙を零した。 彼の突き詰めた空想の糸が、そこでぽつりと切れてしまい、彼女の姿はまた....
紅白縮緬組」より 著者:国枝史郎
出しているのもそれらしくて勇ましい。 空には上弦の初夏の月が、朧ろに霞んだ光を零し、川面を渡る深夜の風は並木の桜の若葉に戦いで清々しい香いを吹き散らす。 三....
大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
の玉乗の元締、それをしている「爺つあん」は、どうしたものかこう云うと涙をポロポロ零したが、そのまま夜具へ顔を埋めた。 驚いたのはトン公であった。ポカンと「爺つ....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
などの間に立ち雑って、仄白い花を咲かせていた桜の花がひとしきり、花弁を瀧のように零したのは、逃げて行く際に覚兵衛の一味が、それらの木々にぶつかったからであろう。....
名人地獄」より 著者:国枝史郎
。 「つかまりそうもありませんな」 「彼は一個の義賊というので、お上の方でもお目零しをなされ、つかまえないのではありますまいかな?」 「さようなことはありますま....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
と会った。 「…‥……」 「…………」 鵜烏が、川面を斜に翔けながら、啼き声を零した。 こういう事件があってから三日の日が経った。 その三日目の朝、飯塚薪....
百喩経」より 著者:岡本かの子
他人には理解されずに終る果敢ないものの一つなのか。作太郎は医者の前で涙をぽろぽろ零した。医者は作太郎の膨れた頬に丁寧に麻痺剤を注射した。手術を取捲いた花嫁を前に....
ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
けちゃった。あの小娘なんて人の頭を抑える電気が強いんだろう。 女は涙をぽろぽろ零し乍らやけに小田島を引張って場付きの酒場へ入って行った。また酒か。と小田島はく....
」より 著者:犬田卯
にとってはおやじが八年間遊んで使った金に比すれば、それは十分の一にも相当しないと零した位で、かなりあった土地もおおかた抵当に入ってしまい、あまつさえ医師への払い....
」より 著者:犬田卯
入る前、彼は工場をやめて、家の仕事を手伝っていたのだ。百姓はつらい、つらい……と零しながらも、由次には負けず、田の草も掻き、畑の草取りもした。 お蔭で、植付が....
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
門の死骸のことは誰にも知れんわけでございます。お話二つに分れまして、丈助は空涙を零しながら根本の宅へ帰って参りますと、おみゑは案じて居りまする。門口から、 丈「....