霜解け[語句情報] » 霜解け

「霜解け〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

霜解けの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
冬の日」より 著者:梶井基次郎
それと一緒に処分されたものを聞くと、彼はその店を出た。 一匹の痩せ衰えた犬が、霜解けの路ばたで醜い腰付を慄《ふる》わせながら、糞をしようとしていた。堯《たかし....
過古」より 著者:梶井基次郎
望を逃《のが》れて郊外へ移った。そこは偶然にも以前住んだことのある町に近かった。霜解け、夕|凍《じ》み、その匂いには憶《おぼ》えがあった。 ひと月ふた月経った....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
でも住んでいるようにガランとしていた。 昼食後も亦元の所に坐って茫然薄日の差す霜解けの庭を眺めていたが、三時を過ぎると物憂げに立上って、気の進まぬように着物を....
田舎教師」より 著者:田山花袋
お正月が来たような気がする」こう言って通った。父親は今朝猫の額のような畠の角で、霜解けの土をザグザグ踏みながら、白い手を泥だらけにして、しきりに何かしていたが、....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
も、手軽でやらぬ家もあるが、要するに年々昔は遠くなって行く。名物は秩父颪の乾風と霜解けだ。武蔵野は、雪は少ない。一尺の上も積るは稀で、五日と消えぬは珍らしい。あ....
一本の花」より 著者:宮本百合子
茶色の天鵞絨《ヴェルヴェット》帽をかぶった大平が立って待っていた。 「この横丁が霜解けがひどそうで御難だが、悪くないでしょう? こちら側が果樹園なのは気が利いて....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
ペの寺院の円屋根を見るでしょう。そうしたら、電車に別れて、あの辺特有の、今ならば霜解けの非道い、鋪装してない歩道|傍の土を踏まなければなりません。ベニイの家は、....
枯菊の影」より 著者:寺田寅彦
か遊びに行ってみたい。行かれぬのでなおそう思う。田端辺りでも好い。広々した畑地に霜解けを踏んで、冬枯れの木立の上に高い蒼空を流れる雲でも見ながら、当もなく歩いて....
イタリア人」より 著者:寺田寅彦
か何かの見すぼらしいのが一株塀の陰にあるばかりで、草花の鉢一つさえない。今頃なら霜解けを踏み荒した土に紙屑や布片などが浅猿しく散らばりへばりついている。晴れた日....
『田舎教師』について」より 著者:田山花袋
ったシーン、風景、感じ、すべてそれは私のものであった。私はそこの垣の畔、寺の庭、霜解けの道、乗合馬車の中、いたるところに小林君の生きて動いているのを見た。 H....
南北」より 著者:横光利一
いてみよ、神棚へでも吊らっしゃろで。」 勘次は秋三を一寸|睥んだが、また黙って霜解けの湿った路の上へ筵を敷いて上から踏んだ。 「さアお前らぼんやりしてんと、ど....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
晩は、さまざまな夢に耽り、あくる日を待ちかねて、定めの時刻に、人寄せ場の空地へ、霜解けをふんで行った。 きょうも師走の風が寒かったが、冬日の下にはたくさん集ま....
雲霧閻魔帳」より 著者:吉川英治
ると、蔵六は、へとへとになって、紺屋ッ原へ、帰って行った。黒い溝川と、枯れ草と、霜解けとの中に、もっそう長屋の塀が、反っくり返っていた。百戸ばかりの牢番が住んで....