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靉
「靉〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
靉の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
めぐりながら、よくやった、最後まで気力を失わなかったのはやはり日本人だと、涙と奇
靉《きあい》をひろげる夢想世界のなかで、しばらく折竹は一言もいえなかった。
そ....
「食魔」より 著者:岡本かの子
の生立ちや、燃え盛る野心や、ままならぬ浮世や、癪に触る現在の境遇をしばし忘れて、
靉靆とした気持になれた。それはこの上|墜ちようもない世の底に身を置く泰らかさと現....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
の女の眼底に、銀座の夜に見たむす子であり、美しい若ものである小ナポレオンの姿が、
靉靆朦朧と魅力を帯びて泛び出して来た。かの女はその時、かの女の母性の陰からかの女....
「河明り」より 著者:岡本かの子
でしたもの」 娘は、また、こんなことを云って、座を取り持った。主人側の男たちは
靉靆として笑った。 娘がこういう風に、一人で主人側との接衝を引受けて呉れるので....
「薬草取」より 著者:泉鏡花
一 日光掩蔽 地上清涼
靉靆垂布 如可承攬 其雨普等 四方倶下 流樹無量 率土充洽 山川険谷 ....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
時に蒼空の澄渡った、」 と心激しくみひらけば、大なる瞳、屹と仰ぎ、 「秋の雲、
靉靆と、あの鵄たちまち孔雀となって、その翼に召したりとも思うお姿、さながら夢枕に....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
らかに、我楽多文庫の旗を飜した、編輯所があって、心織筆耕の花を咲かせ、綾なす霞を
靉靆かせた。 若手の作者よ、小説家よ!……天晴れ、と一つ煽いでやろうと、扇子を....
「死者の書」より 著者:折口信夫
―。 郎女の口よりも、皮膚をつんざいて、あげた叫びである。山腹の紫は、雲となって
靉き、次第次第に降る様に見えた。 明るいのは、山際ばかりではなかった。地上は、砂....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
カチリと楊弓聞え、諸白を燗する家ごとの煙、両側の廂を籠めて、処柄とて春霞、神風に
靉靆く風情、灯の影も深く、浅く、奥に、表に、千鳥がけに、ちらちらちらちら、吸殻も....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
らっしゃる。」 錦の帯を解いた様な、媚めかしい草の上、雨のあとの薄霞、山の裾に
靉靆く中に一張の紫大きさ月輪の如く、はた菫の花束に似たるあり。紫羅傘と書いていち....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
。…… 勿体なくも、路々拝んだ仏神の御名を忘れようとした処へ――花の梢が、低く
靉靆く……藁屋はずれに黒髪が見え、すらりと肩が浮いて、俯向いて出たその娘が、桃に....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
玉を鏤めたようなのが、棟裏に凝って紫の色を籠め、扉に漲って朧なる霞を描き、舞台に
靉靆き、縁を廻って、井欄に数うる擬宝珠を、ほんのりと、さながら夜桜の花の影に包ん....
「夫人利生記」より 著者:泉鏡花
袖のまま、釈尊降誕の一面とは、ともに城の正室の細工だそうである。 面影も、色も
靉靆いて、欄間の雲に浮出づる。影はささぬが、香にこぼれて、後にひかえつつも、畳の....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
た無法ものは、フトその母衣の中に目を注いだ。 これより前、湯屋の坂上の蒼空から
靉靆く菊の影の中、路地へ乗り入れたその車。髷の島田の気高いまで、胸を屹と据えてい....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
列した事がありますがね、今でも目に着いています。全く三保の浦から松の枝ぐるみ霞に
靉靆いて来たようでしたよ。……すぐわきの築山の池に、鶴が居たっけ、なあ……姉さん....