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「青苔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

青苔の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
妖婆」より 著者:芥川竜之介
《めい》りそうな、庇《ひさし》の低い平家建で、この頃の天気に色の出た雨落ちの石の青苔《あおごけ》からも、菌《きのこ》ぐらいは生えるかと思うぐらい、妙にじめじめし....
仇討三態」より 著者:菊池寛
和尚から薪作務のお触れが出ていた。ほがらかな初夏の太陽が老杉を洩れて、しめっぽい青苔の道にも明るい日脚が射していた。 百名を越している大衆に、役僧たちも加わっ....
婦系図」より 著者:泉鏡花
を引くような糸車の音が何家ともなく戸外へ漏れる。路傍に石の古井筒があるが、欠目に青苔の生えた、それにも濡色はなく、ばさばさ燥いで、流も乾びている。そこいら何軒か....
朱日記」より 著者:泉鏡花
ふらしているだろう。 源助、それ、近々に学校で――やがて暑さにはなるし――余り青苔が生えて、石垣も崩れたというので、井戸側を取替えるに、石の大輪が門の内にあっ....
春昼」より 著者:泉鏡花
海を抱いたかかる山の、何処も同じ習である。 樹立ちに薄暗い石段の、石よりも堆い青苔の中に、あの蛍袋という、薄紫の差俯向いた桔梗科の花の早咲を見るにつけても、何....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
の中に、肩から、ぐなりとそげている。これにこそ、わけがあろう。 まず聞け。――青苔に沁む風は、坂に草を吹靡くより、おのずから静ではあるが、階段に、緑に、堂のあ....
南地心中」より 著者:泉鏡花
の撓々と、霜に伏さった冷い緋鹿子、真白な小腕で、どんつくの肩をたたくじゃないか。青苔の緑青がぶくぶく禿げた、湿った貼の香のぷんとする、山の書割の立て掛けてある暗....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
女史に介添してお掛け申す……羽織を取入れたが、窓あかりに、 「これは、大分うらに青苔がついた。悪いなあ。たたんで持つか。」 と、持ったのに、それにお米が手を添....
かの女の朝」より 著者:岡本かの子
遠慮が無く這入れた。或る墓標の傍には、大株の木蓮が白い律義な花を盛り上げていた。青苔が、青粉を敷いたように広い墓地内の地面を落ち付かせていた。さび静まった其の地....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
に、人の足あとが微かに残っていることを、半七はふと見つけ出したのであった。あつい青苔の表は小さい爪先の跡だけ軽く踏みにじられていた。 苔に残っている爪先の跡は....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
て、丁度置石のように自然石があちこちにあしらってあり、そして一|面にふさふさした青苔がぎっしり敷きつめられて居るのです。そこが私達夫婦の会合の場所と決められまし....
おせん」より 著者:邦枝完二
いまし」 「なんだって」 春信は大きく眼を見ひらいた。 七 たとえば青苔の上に、二つ三つこぼれた水引草の花にも似て、畳の上に裾を乱して立ちかけたおせ....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
って俯向いて線香を供えた。細い煙が、裏すいて乱るるばかり、墓の落葉は堆い。湿った青苔に蝋燭が刺って、揺れもせず、燐寸でうつした灯がまっ直に白く昇った。 チーン....
卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
飛んで来ている――成程、親たちの墓へ入ったんだから、不思議はありませんが、あの、青苔が蒸して、土の黒い、小さな先祖代々の石塔の影に、真新しい白い塔婆で、すっくり....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
かけて行く。其処の岩鼻は直下数百|尋の渓谷を瞰下する断崖の頂きで岩は一面に微細な青苔に蔽われている。彼は青苔に草鞋をしっかと着け、軽々しく小便を洩らすことなどが....