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「静穏〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

静穏の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
の影さえ濃やかな波の一つ一つの陰に畳んでしっとりと穏かだった。だが、私は何かその静穏な海の状態に陰険な打ち潜んだ気配を感じて、やや憎みさえ覚えた。今日は海へはい....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ような空気が、未だ飽和点に達しなかったからであろうか。否、その時すでに水底では、静穏な水面とは反対に、暗黒の地下流に注ぐ大きな瀑布が始まっていたのだ。そして、そ....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
的な色に乏しく、北国の風の落ちた大海の深い底を秘めて静まり返ってるのを見るような静穏なものである。その淋しい海の面に夢のように落ちる極光のような神秘な色さえ帯び....
鞄らしくない鞄」より 著者:海野十三
たでしょうか」 臼井は錐《きり》のように鋭く問い迫る。 「昨夜は極《きわ》めて静穏《せいおん》でしたな。報告するほどの事件は一つもなかった。いや、正確に申せば....
奇賊は支払う」より 著者:海野十三
わねばならない。そして当の夫人の身柄は、既に某所に移されて居り、そこにおいて安全静穏な生活を営んでいる現況だった。 夫人代役が苅谷邸を去ってから数分後、苅谷氏....
空襲警報」より 著者:海野十三
練の賜であることは明かであります。東京は只今、二、三火災の所はありますが、一体に静穏であります。防護団にあると家庭にあるとを問わず、この防空第一線を死守されまし....
太郎坊」より 著者:幸田露伴
有りげに一心になって聞いている。庭には梧桐を動かしてそよそよと渡る風が、ごくごく静穏な合の手を弾いている。 「頭がそろそろ禿げかかってこんなになってはおれも敵わ....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
、もう一本蝋燭にありつく望みもないからな――。 二 九月十二日、静穏なる好天気。船は依然おなじ位置に在り。すべて風は南西より吹く。但し極めて微弱....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
その日一日は別に変わったこともなかった。カムチャツカ号は定刻に出帆した。海路は静穏、天気は蒸し暑かったが、船が動いていたので爽かな風がそよそよと吹いていた。す....
前記天満焼」より 著者:国枝史郎
それとて条件があって、国内は四民に不満なく、国外は外国の侵逼なく、五穀実り、天候静穏、礼楽ことごとく調うような、理想的政治を行なうなれば、預けまかせておいてもよ....
取舵」より 著者:泉鏡花
は低落して、呼吸の自由を礙げ、あわれ肩をも抑うるばかりに覚えたりき。 疑うべき静穏! 異むべき安恬! 名だたる親不知の荒磯に差懸りたるに、船体は微動だにせずし....
新しき世界の為めの新しき芸術」より 著者:大杉栄
ある。闘争である。有らゆる苦難のある闘争の方が、諸君の美わしい死よりも善いのだ。静穏な時代や芸術は如何にも望ましい仕合である。しかし其の時代が乱れている時には、....
」より 著者:犬田卯
彼女は、今度こそはなんとか処置したかった。 ところで表面は、この頃、一家は至極静穏に推移していたといってよかった。勇の北満行きはひとまず秋になってからというこ....
西航日録」より 著者:井上円了
平洋、天外雲鎖渾渺漠、檣頭風掛自清涼、更無山影入吟望、時有月光窺客牀、喜此波上甚静穏、笑我閑中却多忙、或説礦業或美術、談罷呼茶又挙觴、勿謂五千里程遠、従今旬余到....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
外は、一切の荷物を岩屋に残して、早めに雪渓を登り始めた時には、霧の運動もしばらく静穏になっていた。 河の左岸に沿うて昨日の道を一町も行くと雪のある所に達する、....