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飽和
「飽和〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
飽和の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
になった。長く寒く続いた五月雨《さみだれ》のなごりで、水蒸気が空気中に気味わるく
飽和されて、さらぬだに急に堪《た》え難《がた》く暑くなった気候をますます堪え難い....
「「いき」の構造」より 著者:九鬼周造
によって形状上の二元性を色彩上にも言表わすか、または一色の濃淡の差あるいは一定の
飽和度《ほうわど》における一色が形状上の二元的対立に特殊な情調を与える役を演ずる....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
風物から、なんとも云えぬ異様な色彩が眼を打ってくることだった。それが、あの真夏の
飽和――燃えさかるような緑でないことは明らかであるが、さりとてまた、雑色でも混淆....
「地球発狂事件」より 著者:海野十三
や、必ず持って来てやるよ、はははは」 談笑が、煙草の煙とアルコールの強い匂いで
飽和したサロンの空気をかきまわす。 水戸もドレゴも、その渦巻の中に顔を見せてい....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
三・四二であるからその高さは四二一キロメートルとなるであろう。同様にもし雰囲気が
飽和水蒸気とその中に浮遊する水滴とで成り立っているとしてもその気層の高さはかなり....
「演技指導論草案」より 著者:伊丹万作
また演出者を信頼せぬ場合、俳優はその力を十分に出せるものではない。 ○「信頼」が
飽和的な状態にあるときは、たとえば演出者が黙って出てきて椅子に坐っただけで既にあ....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
度計の方は、その傍に居る人の衣服がポッポッと湯気を出して乾燥中であるために殆んど
飽和状態に近い湿度を記録したのでありましょう。三分以後は三曲線とも元のように帰ろ....
「食魔」より 著者:岡本かの子
体を持っている鼈四郎はあらゆる官能慾を貪るに堪えた。ある種の嗜慾以外は、貪り能う
飽和点を味い締められるが故に却って恬淡になれた。 檜垣の主人は、鼈四郎を連れて....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
込まれた、このベビー・レコードは、恐らく、余白のないほど女心の痛みを刻み込まれて
飽和してしまったのではあるまいか。この二十歳そこらの青年は、人の一生も二生もかか....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
どの泡一つ立たなかったのだが、恐らくそれと云うのも、その瘴気のような空気が、未だ
飽和点に達しなかったからであろうか。否、その時すでに水底では、静穏な水面とは反対....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
た。恋愛のため今は何ものをも犠牲にして悔いず、また恋愛以外のものは何一つ無くとも
飽和し得ると信じたほど恋愛に生きた。父母も、姉妹も、知己も、自分が一生をそのため....
「女性の諸問題」より 著者:倉田百三
全な推移としてあらわれてくる。それは恋愛の冷却というべきものではなくして、自然の
飽和と見るべきものだ。少なくともそれはニイチェのいうような、一層高いものに、転生....
「科学者と夜店商人」より 著者:海野十三
ンであるですかッ?」 「これかネ――これは泥水でさア」 「アノ泥水――土の粒子を
飽和した水……だと言うのかネ」 科学者は眼をパチクリとしたが、その瞬間に彼の推....
「私の活動写真傍観史」より 著者:伊丹万作
真はロケーションが多く、それも快晴ばかりで、実に写真全体がアリゾナあたりの太陽に
飽和していた感じがある。いま考えてみてもあんな明るい写真はたくさんなかつたような....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
いたように、エゴイスチッシュな動機をはなれて、女性を愛し、しかもそれが性の要求の
飽和を与え、しかも天の使のような生活を傷つけないような女性の愛し方はあるまいか、....