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香油
「香油〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
香油の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
たる「永遠」の不可思議だという気がする。吾妻橋、厩橋《うまやばし》、両国橋の間、
香油のような青い水が、大きな橋台の花崗石《かこうせき》とれんがとをひたしてゆくう....
「老妓抄」より 著者:岡本かの子
へ移るとき、わざとよろけて柚木の背を抱えるようにして掴《つかま》った。柚木の鼻に
香油の匂いがして、胸の前に後|襟《えり》の赤い裏から肥った白い首がむっくり抜き出....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
。おまけに東京弁だ! 「どうしてとれちゃったの?」女はなおも上衣にさわっていた。
香油の匂いが鼻をついた。豹一は顔をしかめた。 (まるで質屋の小僧のように俺の洋服....
「旧主人」より 著者:島崎藤村
|煩悶《わずらい》も、すっかり忘れて御了いなすって、御二人の口唇《くちびる》には
香油《においあぶら》を塗りましたよう、それからそれへと御話が滑《はず》みました。....
「白髪小僧」より 著者:杉山萠円
》中を拭《ぬぐ》い上げる。残った一人はうしろから髪を梳《す》く。おしまいの一人は
香油《においあぶら》を振りかける。皆順序よく静かに役目をつとめて、先《ま》ず黒い....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
長椅子一脚、広縁だから、十分に余裕がある。戸袋と向合った壁に、棚を釣って、香水、
香油、白粉の類、花瓶まじりに、ブラッシ、櫛などを並べて、洋式の化粧の間と見えるが....
「幽霊妻」より 著者:大阪圭吉
ませんか。そして、おまけにその髪の毛からは、ほのかに、あの懐かしい、日本髪に使う
香油の匂いがしているではございませんか……。私はふと無意識で頭をあげました。この....
「落穴と振子」より 著者:佐々木直次郎
前にさし迫った火刑の死を考えると、あの井戸の冷たさという観念が、苦痛をやわらげる
香油のように心に浮んできた。私はその恐ろしい井戸のふちへ走りよった。眼を見はって....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
嬌臭及び嬌味薬となる、あるいは種子を酒に浸し、飲用すれば疝気に効あり。茴香精、茴
香油、茴香水を採録す」 北山はここで舌打ちをした。 「どうもこれでは仕方がない....
「人魚のひいさま」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
先ぶれは町じゅう馬をはしらせて、ご婚約のことを知らせました。あるかぎりの祭壇には
香油が、もったないような銀のランプのなかでもえていました。坊さんたちが香炉をゆす....
「私の小売商道」より 著者:相馬愛蔵
くべからざる要素を持っているといわねばならぬ。 日本橋のある町に、仏蘭西の香水
香油等化粧品いっさいを売って、大繁昌をきわめている一商人がある。初めこの店の主人....
「銀三十枚」より 著者:国枝史郎
ト様が死んだとさ 「ふん、いい気味だ、思い知ったか。……妾は最初あの人が好きで、
香油で足を洗い、精々ご機嫌を取ったのに、見返ろうとさえしなかったんだからね。そこ....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
く今日の君の様子は、変梃と云わざるを得なかったよ。蛮的の君がお洒落をする。頭髪を
香油で撫でつけるやら、ハンカチへ香水をしめすやら、そしてむやみにソワソワして腕時....
「接吻」より 著者:神西清
…つい今しがた、いい匂いのするふっくらと柔らかな両腕に抱きしめられた彼の頸筋は、
香油でも塗られたような気持がしていたし、頬はというと、見知らぬ女に接吻された左の....
「ベートーヴェンの生涯」より 著者:片山敏彦
に、それを自分の身につけることになる。それは地下層の中に生きる。皮下に注射された
香油のようなものである。われわれの思想の血液はベートーヴェン的血球から流れ出る河....