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香煙
「香煙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
香煙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「喝采」より 著者:太宰治
、など騒々しきを、夜も更《ふ》けたり、またの日にこそ、と約した、またの日、ああ、
香煙|濛々《もうもう》の底、仏間の奥隅、屏風《びょうぶ》の陰、白き四角の布切れの....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
寺辰こと辰九郎のなきがらをもいっしょに、お屋敷内の藩士たまりべやに安置しながら、
香煙|縷々《るる》としてたなびく間に、いまし、おみずからご焼香あそばさっていられ....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
隊のための祈願をすることになった。読経の合間合間に経輪がまわっている。むせっぽい
香煙や装飾の原色。だんだんケティは眩暈《めまい》のようなものを感じてきた。すうっ....
「思い出す事など」より 著者:夏目漱石
気灯がぐらぐらと動いた。硝子《ガラス》の中に彎曲《わんきょく》した一本の光が、線
香煙花《せんこうはなび》のように疾《と》く閃《きら》めいた。余は生れてからこの時....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ツェの市旗に覆われ、四人の麻布を纏った僧侶の肩に担がれた。そして、湧き起る合唱と
香煙の渦の中を、裏庭の墓※をさして運ばれて行ったのである――閉幕。....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
を待っていたが、それからも彼は二三度お詣りのお伴をして、ある時は段々をあがって、
香煙の立ち昇っている御堂近くまで行ってみたこともあった。 ある日も庸三はこの水....
「若き日の成吉思汗」より 著者:林不忘
三段高く、王座あり。かたわらの飾り台の上に、大いなる青銅の香炉《こうろ》ありて、
香煙立ち昇る。傍に、唐獅子《からじし》の陶器の香盒《こうごう》を置く。王座のうし....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
がしました。
右の巨大なる石の地蔵尊が安坐しているその膝元には、まだ消えやらぬ
香煙が盛んに立ちのぼり、供えられた線香の量が多いものだから、香火が紅々と燃え立つ....
「半日ある記」より 著者:寺田寅彦
稚き女の子一人、いずれも身なり賤しからぬに白粉気なき耳の根色白し。墓前花堆うして
香煙空しく迷う塔婆の影、木の間もる日光をあびて骨あらわなる白張燈籠目に立つなどさ....
「幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
の襖を開いた。香を焚いた。諸行無常……というよりも寧ろ、凡て空《くう》なり、その
香煙が静かに立ち昇った。白布の結え目を解き、箱を開き、壷のの」]蓋を取ると、所々....
「歳時記新註」より 著者:寺田寅彦
際松山の霧は松の香がして火山の霧は硫黄臭い。しかし「霧不断の香をたく」というのは
香煙に見立てた眼の感じで鼻の感じではあるまい。(明治四十一年十月一日『東京朝日新....
「おせん」より 著者:邦枝完二
抱に辛抱を重ねていた眼からは、玉のような涙が、頬を伝って溢れ落ちた。 やがて、
香煙を揺がせて、恐る恐る襖の間から首を差出したのは、弟子の菊彌だった。 「お客様....
「仲々死なぬ彼奴」より 著者:海野十三
られ、まるでアマゾン河畔の大森林を此処に移したかの感があった。棺の前には、薄紫の
香煙が、濛々と館の内部を垂れこめていた。右の榊の前には、各大臣、議長、将官などが....
「随筆 寄席風俗」より 著者:正岡容
、連翹《れんぎょう》が、※子《しどみ》が、金盞花《きんせんか》が、モヤモヤとした
香煙の中に、早春らしく綻びて微笑《わら》っていた。また文弥君が、最前の短歌を繰り....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
、 石橋 スパセニアの墓 左が、 石橋 ジーナの墓 幽蘭香を焚いて合掌する。
香煙はゆらゆらと立ち昇って、墓の面を掠め、そして、私は憮然として、墓をみつめて立....