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鬢髪
「鬢髪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鬢髪の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
旅寝の衣には露霜が置いていた。翁は湿り気をふるって起上った。僅かに残っている白い
鬢髪からも、長く垂れた白い眉尖からも雫が落ちた。雨風に曝され見すぼらしくなった旅....
「新生」より 著者:島崎藤村
代の娘の心をもって生れて来た節子のような女が、非常に年齢《とし》の違った、しかも
鬢髪《びんぱつ》の既に半ば白い自分のようなものに対《むか》って、彼女の小さな胸を....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
処でもある。しばらく待つうちに、勝重の母親が半蔵らのところへ挨拶に来た。めっきり
鬢髪も白くなり、起居振舞は名古屋人に似て、しかも容貌はどこか山国の人にも近い感じ....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
第にベッドをめぐりて居流れたり。風はそよ吹きてすでに死せるがごとく横たわる浪子の
鬢髪をそよがし、医はしきりに患者の面をうかがいつつ脈をとれば、こなたに立てる看護....
「半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
生得絵を見ても毛穴が立つほど鼠が嫌なんだと言います。ここにおいて、居士が、騎士に
鬢髪を染めた次第です。宿のその二階家の前は、一杯の人だかりで……欄干の二階の雨戸....
「仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
からせよう」 「黙れ!」と主税は怒声を上げた。 「逆臣! いや悪党!」 乱れた
鬢髪、血走った眼、蒼白の顔色、土気色の口、そういう形相を燭台の燈の、薄暗い中で強....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
がら植松先生は色が黒く精悍な、きびきびした顔をしておられた。しかし今は年傾いて、
鬢髪も白くなって、やや翁さびて見られるのであった。 中学時代の先生達は多くはす....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
様」と呼ばれた武士は、まことに威厳のある風采であった。年の格好は五十歳あまりで、
鬢髪に塩をまじえている。太くうねっている一文字の眉は、臥蚕という文字にうってつけ....
「盗難」より 著者:佐藤垢石
歴し、家庭と共に流れ流れて歩く間に、持てるものを悉く費やし果たした。 そして、
鬢髪に白いものを数える初老の頃になり尾羽打ち枯らして、二十数年振りで故郷の家へ戻....
「楢の若葉」より 著者:佐藤垢石
何なりと村の人の言うことに、諾々とうなずいた好人物の父……。 鏡に映るわが白き
鬢髪を見て、年毎に亡き父の俤に似てくるわが姿を想って、感慨無量である。....
「平家蟹」より 著者:岡本綺堂
くやからは、男も女も根絶しにして見せましょうぞ。 (云う声はしだいにうわ嗄れて、
鬢髪そよぎ、顔色すさまじ、下の方の木かげより以前の雨月忍び出で、息をのんで内の様....
「日和下駄」より 著者:永井荷風
ち》ともいいたいほど意気|頗《すこぶる》豪なるところがあったが今その十年の昔と、
鬢髪《びんぱつ》いまだ幸《さいわい》にして霜を戴かざれど精魂漸く衰え聖代の世に男....
「金山揷話」より 著者:大鹿卓
ねて社会に活動している者にしても、おおかたは人生の艱難をようやく味い知り、等しく
鬢髪に白いものを加えようとする年輩である。いま土田が云いだした森山とは私も一年前....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
方へ火箸をあて、ジーッと力に任せて突ッ通すと、プーと烟が顔へかゝりました。若草は
鬢髪を逆立て、片膝を立て、怨めしそうに堀切の方を延上って見詰めた時の凄いこと、実....
「俗法師考」より 著者:喜田貞吉
の為に、不思議に生命が助かつた。 紀伊牟婁郡の出身で牟婁の沙弥と言はれたものは、
鬢髪を剃除し袈裟を着けながら、而も俗に即き。それでも崇仏の功徳は著しいもので、此....