»
鬣
「鬣〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鬣の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
って、おぼろげながら黒く見える。と思う間《ま》に、馬は、高くいななきながら、長い
鬣《たてがみ》をさっと振るうと、四つの蹄《ひづめ》に砂煙をまき上げて、またたく暇....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
た。彼れははじめて立停った。痩馬も歩いた姿勢をそのままにのそりと動かなくなった。
鬣《たてがみ》と尻尾《しりっぽ》だけが風に従ってなびいた。
「何んていうだ農場は....
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
思いも付かなかった。彼は手綱《たづな》の切れた暴馬《あれうま》のように、むやみに
鬣毛《たてがみ》を振り立てて狂い廻っているのを無上の楽しみとしていた。彼は自分の....
「高野聖」より 著者:泉鏡花
の綱《つな》を引く。青で蘆毛《あしげ》、裸馬《はだかうま》で逞《たくま》しいが、
鬣《たてがみ》の薄い牡《おす》じゃわい。
その馬がさ、私も別に馬は珍しゅうもな....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
して、横波を食わせながら船を北へと向けて行った。 陸地に近づくと波はなお怒る。
鬣を風になびかして暴れる野馬のように、波頭は波の穂になり、波の穂は飛沫になり、飛....
「春昼」より 著者:泉鏡花
馬の顔がむくむくと湧いて出た。 唯見る、それさえ不意な上、胴体は唯一ツでない。
鬣に
鬣が繋がって、胴に胴が重なって、凡そ五、六|間があいだ獣の背である。 咄嗟....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
りませんが、わたしは氷のような髪を梳いてやりました。たばねたり解いたりして、馬の
鬣毛のように一つの組糸としてたばねてやると、女はその頭を垂れて溜め息をついて、さ....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
て、悠然と打って来た。茶屋の際の葉柳の下枝を潜って、ぬっくりと黒く顕われたのは、
鬣から尾に至るまで六尺、長の高きこと三尺、全身墨のごとくにして夜眼一点の白あり、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
芭蕉の葉の、沼の上へ擢んでたのが、峰から伸出いて覗くかと、頭に高う、さながら馬の
鬣のごとく、譬えば長髪を乱した体の、ばさとある附元は、どうやら痩こけた蒼黒い、尖....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
やかすように叫び、また折りおりは燐光のような野猫の眼の輝くのを見ました。 馬は
鬣をだんだんにかき乱して、脇腹には汗をしたたらせ、鼻息もひどくあらあらしくなって....
「鷲」より 著者:岡本綺堂
町へむかった。けさから一旦衰えかかった木枯しがまたはげしく吹きおろしてきて、馬の
鬣髪のような白い浪が青空の下に大きく跳り狂っていた。尾白の大鷲はこの風に乗って来....
「五色蟹」より 著者:岡本綺堂
、往来の人達もその噂をして通った。遠泉君は海岸の石に腰をかけて、沖の方から白馬の
鬣毛のようにもつれて跳って来る浪の光りをながめているうちに、ふと自分の足もとへ眼....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
ぬ。あの絶頂に登りつめて瞰おろしたら、四里四方の敵軍は眼の下で、小荷駄を運ぶ馬の
鬣毛のそよぐまでもありありと窺わるるのじゃ。それほどの構えをしたこの城に、宗徒の....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
時雨に真青なのは蒼
鬣魚の鰭である。形は小さいが、三十枚ばかりずつ幾山にも並べた、あの暗灰色の菱形の....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
に尾を動かしている鶲は、私の近寄るのも知らぬげに寒さに顫えている。行き逢う駄馬が
鬣を振わして雨の滴を顔のあたりへ飛ばせて来ることもある。蕭条たる気が犇々と身に応....