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鯱
「鯱〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鯱の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「のんきな患者」より 著者:梶井基次郎
ういうふうに感じさせるんだろうか。――吉田はほとんど身動きもできない姿勢で身体を
鯱硬張《しゃちこば》らせたままかろうじて胸へ呼吸を送っていた。そして今もし突如こ....
「妖術」より 著者:泉鏡花
転手は雨にあたかも潜水夫の風情に見えて、束の間は塵も留めず、――外の人の混雑は、
鯱に追われたような中に。―― 一帆は誰よりも後れて下りた。もう一人も残らないか....
「朱日記」より 著者:泉鏡花
助は声を詰めた。 「真黒な円い天窓を露出でな、耳元を離した処へ、その赤合羽の袖を
鯱子張らせる形に、大な肱を、ト鍵形に曲げて、柄の短い赤い旗を飜々と見せて、しゃん....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
ろしく、天井などは早くから取除いてあったためである。 しかし四百機の来襲で、金
鯱の名古屋城天守閣も焼失した。大きな建築物の受難時代である。敵は三キロ焼夷弾を使....
「動かぬ鯨群」より 著者:大阪圭吉
鯨船が現れたのだ。うっかりしていて、最初船長がそれを発見けた時には、もうその船は
鯱のような素早さで、鯨群に肉迫していた。 隼丸は、あわてて速度を落す。幸い向う....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
部屋中を充たした頃から、雛妓は何となく夢幻の浸蝕を感じたらしく、態度にもだんだん
鯱張った意識を抜いて来て、持って生れた女の便りなさを現して来た。眼はうつろに斜め....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
た。わたしは松葉君よりも足かけ四年おくれて、明治三十五年の歌舞伎座一月興行に「金
鯱噂高浪」という四幕物を上場することになった。これに就いては岡鬼太郎君が大いに力....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
雪の消残ったようであろう。少しく離れた私の兜の竜頭は、城の天守の棟に飾った黄金の
鯱ほどに見えようと思う。 美女 あの、人の目に、それが、貴方? 公子 譬喩です、....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、逞しい人間ほどはあろう。荒海の巌礁に棲み、鱗鋭く、面顰んで、鰭が硬い。と見ると
鯱に似て、彼が城の天守に金銀を鎧った諸侯なるに対して、これは赤合羽を絡った下郎が....
「空襲警報」より 著者:海野十三
しかし、その間に、敵機の数もまた一台二台とへっていった。勇猛果敢なわが戦闘機は、
鯱のように食下って少しも攻撃をゆるめないのだ。上から真逆落しに敵機へぶつかって組....
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
はどうした。) (ござんせん。) (魚断、菜断、穀断と、茶断、塩断……こうなりゃ
鯱立ちだ。) と、主人が、どたりと寝て、両脚を大の字に開くと、 (あああ、待ち....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
。 血だらけだ、血だらけだ、血だらけの稚児だ――と叫ぶ――柵の外の群集の波を、
鯱に追われて泳ぐがごとく、多一の顔が真蒼に顕れた。 「お呼びや、私をお知らせや。....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
まけるのと、飲むことを教えた愛吉の親方でさ。 だから狐床ッてくらいなんで。鯨に
鯱、末社に稲荷。これに逢っちゃ叶いません。その癖奴が、どんな乱暴を働いたって、仲....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
助のことを言い出した。 柿の木金助は大凧に乗って名古屋城の天主閣に登って、金の
鯱の鱗をはがしたと伝えられている。かれは享保年間に尾州領内をあらし廻った大賊で、....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
まったのだ。それが、まだしっくりとはとてもうちとけないで、何かしら気づまりで固く
鯱こばっていたのが、昨夜の童謡音楽会でさらりと流れ、ふわりと和らいでしまった。 ....