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「黄塵〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

黄塵の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
馬の脚」より 著者:芥川竜之介
の脚の興奮したのはこう言うためだったと確信している。―― 当日は烈《はげ》しい黄塵《こうじん》だった。黄塵とは蒙古《もうこ》の春風《しゅんぷう》の北京《ペキン....
二十世紀旗手」より 著者:太宰治
の身のまわりを吹き荒《すさ》ぶ思い、見ゆるは、おたがいの青いマスク、ほかは万丈の黄塵に呑まれて一物もなし。この暴風に抗して、よろめきよろめき、卓を押しのけ、手を....
狂言の神」より 著者:太宰治
言った。ちろちろと舌でなめるが如く、はりあいのない呑みかたをしながら、乱風の奥、黄塵に烟《けむ》る江の島を、まさにうらめしげに、眺めていたようである。背を丸くし....
李陵」より 著者:中島敦
たのである。 南行三日めの午《ひる》、漢軍の後方はるか北の地平線に、雲のごとく黄塵《こうじん》の揚がるのが見られた。匈奴騎兵の追撃である。翌日はすでに八万の胡....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
ながめている人の話によると、時あって月が紅《あか》く見えるそうです。多分、それは黄塵が空中に満ちて、銀環《ぎんかん》の色を消す所以《ゆえん》のものでありましょう....
大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
ラムにはない事だった。さすがに紅海は太陽の光と熱砂の霞と共に暑かった。汗と砂漠の黄塵によって私の肉体も顔も口の中までも包まれてしまった。そして地中海に入って漸く....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
―やらまた たあ――んぐろえ 山※子売りはハルビン街上風景の一主要人物である。黄塵万丈の風に乗って、泣くようなその売り声が町の角々から漂ってくるとき、人は「哈....
亡び行く江戸趣味」より 著者:淡島寒月
憬する広重の錦絵に見る、隅田の美しい流れも、現実には煤煙に汚れたり、自動車の煽る黄塵に塗れ、殊に震災の蹂躙に全く荒れ果て、隅田の情趣になくてはならない屋形船も乗....
電車と風呂」より 著者:寺田寅彦
った。そのうちに天気が好くなると今度は強い南のから風が吹いて、呼吸もつまりそうな黄塵の中を泳ぐようにして駆けまわらねばならなかった。そして帽子をさらわれないため....
砂漠の情熱」より 著者:豊島与志雄
は省線電車の高架、それから雑多な建物。スタジアムの内部は芝生の色も褪せ、風吹けば黄塵が渦巻く。だが、不思議なことに、天気の日には殆ど常に、前方の空中を或は高く或....
白塔の歌」より 著者:豊島与志雄
きちらす感傷主義を、土足で踏みにじり得る者は果して誰ぞ、という質問もありました。黄塵にまみれた古い洋車に、磨きすまされたランプがつけられている象徴を、理解する者....
音に就いて」より 著者:太宰治
で読めなかった。神魂かたむけて書き綴った文章なのであろう。細民街のぼろアパアト、黄塵白日、子らの喧噪、バケツの水もたちまちぬるむ炎熱、そのアパアトに、気の毒なヘ....
上野」より 著者:永井荷風
ハ正ニ雲外ニ懸ル。彩霞波ヲ掩ヒ不忍ノ湖ハ頓ニ水色ヲ変ズ。都人士女堵ヲ傾ケ袂ヲ連ネ黄塵一簇雲集群遊ス。車馬旁午シ綺羅絡繹タリ。数騎銜ヲ駢ベ鞍上ニ相話シテ行ク者ハ洋....
日和下駄」より 著者:永井荷風
たま》の刺繍《ぬいとり》をする。われら薄倖《はくこう》の詩人は田園においてよりも黄塵《こうじん》の都市において更に深く「自然」の恵みに感謝せねばならぬ。 第九....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
異なり、赤土にあらずして白土なり。ただし、その質砂よりも軽く、風来たればたちまち黄塵万丈を起こすことは相同じ。樹木は常葉樹多く、落葉樹少なし。わが松と柳に似たる....