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黒煙
「黒煙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
黒煙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
い長い間の事でございました。――その内にふと気がつきますと、どこからか濛々とした
黒煙《くろけむり》が一なだれに屋根を渡って、むっと私の顔へ吹きつけました。と思う....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
さんにも聞いて見ねえ。」 「不埒な奴だ?」 と揺いた英臣の髯の色、口を開いて、
黒煙に似た。 「不埒は承知よ。不埒を承知でした事を、不埒と言ったって怯然ともしね....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
も降ってきそうな空|際だ。日清紡績の大煙突からは、いまさらのごとくみなぎり出した
黒煙が、深川の空をおおうて一文字にたなびく。壮観にはちがいないが不愉快な感じもす....
「浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
あった。そして海ばかりであった。ただ前方二百メートルを距てた向こうに、旗艦須磨が
黒煙をはきながら白い水泡をたててゆく。 ぽぽーと、汽艇の響が、右舷の下でする。....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
さえ、杜若咲く八ツ橋と、月の武蔵野ほどに趣が激変して、浦には白帆の鴎が舞い、沖を
黒煙の竜が奔る。 これだけでも眩くばかりなるに、蹈む足許は、岩のその剣の刃を渡....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
に対して、ハッと燃え立つ緋の片袖。二の腕に颯と飜えって、雪なす小手を翳しながら、
黒煙の下になり行く汽車を遥に見送った。 百合若の矢のあとも、そのかがみよ、と見....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
火に焼いたように衝と汽車を出たその姿は、かえって露の滴るごとく、おめき集う群集は
黒煙に似たのである。 技師は真俯向けに、革鞄の紫の袖に伏した。 乗合は喝采し....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
、杖をわきに挟んで云った。 二 七筋ばかり、工場の呼吸であろう、
黒煙が、こう、風がないから、真直に立騰って、城の櫓の棟を巻いて、その蔽被った暗い....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
げること、焼山越の蠎蛇の比にあらず、朝鮮|蔚山の敵軍へ、大砲を打込むばかり、油の
黒煙を立てる裡で、お誓を呼立つること、矢叫びに相斉しい。名を知らぬものまで、白く....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
しあがる処が、あの……」 「いや、どうも、そりゃちと違いましょう。牛肉のバタ焼の
黒煙を立てて、腐った樽柿の息を吹くのと、明神の清水を汲んで、松風を吸ったのでは、....
「多神教」より 著者:泉鏡花
鉄棒で挫かれたいと、覚悟をしておりましたが、馬が、一頭、背後から、青い火を上げ、
黒煙を立てて駈けて来て、背中へ打つかりそうになりましたので、思わず、崖へころがり....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
正面、根を赫と赤く焼いた。 「火事――」と道の中へ衝と出た、人の飛ぶ足より疾く、
黒煙は幅を拡げ、屏風を立てて、千仭の断崖を切立てたように聳った。 「火事だぞ。」....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
の血相、猛然として躍り込むと、戸外は風で吹き散ったれ、壁の残った内は籠って、颯と
黒煙が引包む。 「無茶でさ、目も口も開きやしねえ、横もうしろも山のような炎の車が....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
火口に立って、奥能登の故郷の方に向って手を合わせて、いまわという時、立騰る地獄の
黒煙が、線香の脈となって、磊々たる熔岩が艾の形に変じた、といいます。 ちょっと....
「欧米各国 政教日記」より 著者:井上円了
うに一定すると同一なり。 ロンドンは十一月より二月に至るまで、およそ四カ月間は
黒煙四方に遮り、終日日影を見ず。はなはだしきにいたりては、四隣灯をともし、白昼あ....