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黒蟻
「黒蟻〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
黒蟻の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
はいなかった。
いつのまに動いたともなく船は桟橋から遠ざかっていた。人の群れが
黒蟻《くろあり》のように集まったそこの光景は、葉子の目の前にひらけて行く大きな港....
「首を失った蜻蛉」より 著者:佐左木俊郎
蟻《あり》がうじゃうじゃと寄っている。そして大きな眼球のついた蜻蛉の頭は、小さな
黒蟻の群に運び去られたのか、死体のまわりには落ちていなかった。 彼は煙草の煙を....
「空を飛ぶパラソル」より 著者:夢野久作
しく光る乳房と、黒い、紫がかった乳首があらわれたが、その上を、もう、一匹の大きな
黒蟻が狼狽して駈けまわっていた。 さては……と私は息を詰めた。すぐに安物らしい....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
でもこんな錯覚が時々ありそうですな。」「…………。」立ち上った氏の足下には大粒の
黒蟻が沢山殺されて居た。汗で長髪を額にねばり付かせ、けらけら笑って立って居る氏に....
「庭の怪」より 著者:田中貢太郎
翌朝になって光長は己で庭へ出て見た。昨夜少年の角力をとっていたあたりに、一匹の
黒蟻と牛蝨が並んで死んでいた。....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
たドックの建物を山の上から見降ろしていると、旗を押したてて通用門みたいなところに
黒蟻《くろあり》のような職工の群が唸っていた。山の小道を子供を連れたお上さんやお....
「神秘昆虫館」より 著者:国枝史郎
声が湧き起こった。 一挺の山駕籠がまず現われ、それに続いて二、三十人の武士が、
黒蟻のように現われた。谷を見下ろしているのである。 「おおあれは田安勢だ!」こう....
「芽生」より 著者:宮本百合子
ればいいのにと思い出すともうきりがなくいろんな事が頭にうかんで来て、本の字なんか
黒蟻の行列を見る様になってしまう。彼の人の気まぐれにもほんとうにあいそがつきる様....
「放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
ぐらしたドックを山の上から見ると、菜っぱ服を旗に押したてゝ通用門みたいなとこに、
黒蟻のような職工の群が、ワンワン唸っている。 山の小道を、子供を連れたお上さん....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
よいよ皇居前にさしかかった時に、驚くべし。東京駅と二重橋の間だけは、続々とつづく
黒蟻のような人間の波がゴッタ返しているのです。これを民草というのだそうだが、うま....
「不在地主」より 著者:小林多喜二
本勝った、ロシア負けたア……」 枝切れで蟻穴をつッついていた。 「赤蟻、露助。
黒蟻、日本。――この野郎、日本蟻ばやッつける積りだな。こん畜生。こん畜生!」 ....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
、第三班のそれらより恐らく一時間は遅れていたろう。 と見ると、もう先発の一群は
黒蟻のように、北寄りの緑の斜面を、黙々と螺旋状にのぼっている。角錐形の天幕が一つ....