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黝
「黝〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
黝の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
ま、高々とそそり立つ名物の「香い桜」。朝の光の中で園がそれを見返った時、荒くれて
黝《くろ》ずんだその幹に千社札が一枚斜に貼りつけられてあって、その上を一匹の毛虫....
「富士」より 著者:岡本かの子
の山影は天地の闇を自分に一ぱいに吸込んで、天地大に山影は成り切った。そう見られる
黝《くろず》み方で山は天地を一体の夜色に均《なら》された。打縁流《うちよする》、....
「みちのく」より 著者:岡本かの子
人々に混って行った。青く凝《こご》って澄《す》んだ東北特有の初夏の空の下に町家は
黝《くろず》んで、不揃《ふぞろ》いに並《なら》んでいた。廂《ひさし》を長く突出《....
「鮨」より 著者:岡本かの子
いる。庭石の根締めになっていたやしおの躑躅が石を運び去られたあとの穴の側に半面、
黝く枯れて火のあおりのあとを残しながら、半面に白い花をつけている。 庭の端の崖....
「親子」より 著者:有島武郎
点された。燻製の魚のような香いと、燃えさしの薪の煙とが、寺の庫裡のようにがらんと
黝ずんだ広間と土間とにこもって、それが彼の頭の中へまでも浸み透ってくるようだった....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
の胆汁が滲みだしたような黄色い皮膚と、そして三十女の婦人病を思わせるような眼隈の
黝ずみぐらいなものであった。しかし軈てそれさえすこしも気にならなくなった。という....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
どうしているであろうか。 嵐の前の静寂! 帝都の夜空は、漆のように、いよいよ
黝々と更けていった。 空襲葬送曲 非常管制の警報が出たのは、それから三十....
「恐怖の口笛」より 著者:海野十三
たろう。背丈はあまり高くないが、肩幅の広いガッチリした体躯の持ち主だった。そして
黝ずんだ変な洋服を着ていた。その幅広の肩の上には、めりこんだような巨大な首が載っ....
「三人の双生児」より 著者:海野十三
とである。妾は全く身に覚えがないのに、このように姙娠してしまったのである。乳首は
黝ずみ、下腹部は歴然と膨らみ、この節ではもう胎動をさえ感ずるようになった。婦人科....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
その雲に 雪積まば雪に問へかしわれを。 君行きて心も冥く白妙に 降るてふ夜の雪|
黝み見ゆ。....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
った。何という変り方! 葉子の記憶にあるかぎりの鎌倉時代の麻川氏は、何処か齲んだ
黝さはあってもまだまだ秀麗だった麻川氏が、今は額が細長く丸く禿げ上り、老婆のよう....
「時限爆弾奇譚」より 著者:海野十三
こみながら、 「うふふん。どうもこの燻製の肉の色がすこし気に入らぬわい。こんなに
黝んでいるやつは、肉が硬くていかん。こいつはきっと、煙っぽくて、喰っている間に、....
「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
しく嗚咽しはじめた。 そのことあって以来、ヒルミ夫人の頬が俄かに痩け、瞼の下に
黝んだ隈が浮びでたのも、まことに無理ならぬことであった。 ひとりで部屋のうちに....
「取返し物語」より 著者:岡本かの子
小材木や根太石も其の辺に積み重ねられている。遠景、渋谷越の山峰は日暮れの逆光線に
黝んでいる。) 開幕。土地の信徒で工事手伝いの男女の一群上手よりどやどやと出て来....
「快走」より 著者:岡本かの子
西に遠退いて、西の空を薄桃色に燃え立たせ、眼の前のまばらに立つ住宅は影絵のように
黝ずんで見えていた。道子は光りを求めて進むように、住宅街を突っ切って空の開けた多....