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「黝い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

黝いの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
世相」より 著者:織田作之助
主人に似合わぬ冗談口だった。 その時、トンビを着て茶色のソフトを被った眼の縁の黝い四十前後の男が、キョロキョロとはいって来ると、のそっと私の傍へ寄り、 「旦那....
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
。一段々々と刻んでは落ちている地層の側面は、焦茶色の枯草に掩われ、ところどころ赤黝い土のあらわれた場所もある。その赤土の大波の上は枯々な桑畠で、ウネなりに白い雪....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
こはかとなく漾っていた。 葉子は何か意気な縞柄のお召の中古の羽織に、鈍い青緑と黝い紫との鱗形の銘仙の不断着で、いつもりゅうッげたような心細さを感ずるのだったが....
」より 著者:徳田秋声
少しも減って行かないのを見ると、筆を持つ腕が思わず渋った。下宿の窓のすぐ下には、黝い青木の葉が、埃を被って重なり合っていた。乾いたことのない地面からは、土の匂い....
」より 著者:徳田秋声
る綺麗な湯屋があったりした。廓の真中に植わった柳に芽が吹き出す雪解けの時分から、黝い板廂に霙などのびしょびしょ降る十一月のころまでを、お増はその家で過した。町に....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
眼は終に川に落ちる。丁余の上流では白波の瀬をなして騒いだ石狩川も、こゝでは深い青黝い色をなして、其処此処に小さな渦を巻き/\彼吊橋の下を音もなく流れて来て、一部....
幼年時代」より 著者:堀辰雄
ったばかりの新しい玉網だった。そんな小さな魚や昆虫がそういう得体の知れないような黝い水の上をも、まるで水溜りかなんぞのように、いかにも何気なさそうに泳いでいるの....
生あらば」より 著者:豊島与志雄
木綿の袋を掴んで、じっと屏風の影から彼の方を窺っていた。白くなりかけた髪の毛と赤黝い額と低い鼻とが一緒になって、その中から小さい鋭い眼が睥《にら》んでいた。壮助....
魔都」より 著者:久生十蘭
施され、玄関を挾んだ左右の窓の窓枠の上に据えつけた二台のホッチキッス機関銃が、蒼黝い銃身を物凄く光らせている。 もとは広間《ホール》ででもあったのだろう、七十....
墓地展望亭」より 著者:久生十蘭
ットを啜《すす》りながら、自分の最後の瞬間を味わうために、眼をとじる。 岩が蒼黝い影をおとす海。……拳銃の上にチカチカとはねかえる明るい陽の光。……煙のように....
秋深き」より 著者:織田作之助
虫が背中を這うようだった。 「ほんまに私は不幸な女やと思いますわ」 朝の陽が蒼黝い女の皮膚に映えて、鼻の両脇の脂肪を温めていた。 ちらとそれを見た途端、なぜ....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
をなすり付けたような凄い顔をして此方を向いて居る。赤裸の肌にも偃松の胸毛だけが蒼黝い。更に其右には小窓の谷底から躍り上ったような嶄岩の列が、執念の手を伸して追い....