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「鼻先〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

鼻先の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
葉子の鼻を打って、目の心《しん》まで紅《あか》くなった知らない若者の顔が、近々と鼻先にあらわれていた。はっと身を引く暇もなく、葉子の肩はびしょぬれになった酔いど....
カインの末裔」より 著者:有島武郎
彼れは雪の中に馬を引張り出した。老いぼれたようになった馬はなつかしげに主人の手に鼻先きを持って行った。仁右衛門は右手に隠して持っていた斧《おの》で眉間《みけん》....
火事とポチ」より 著者:有島武郎
静かにどろや血をあらい落としてやった。いたい所をあらってやる時には、ポチはそこに鼻先を持って来て、あらう手をおしのけようとした。 「よしよし静かにしていろ。今き....
星座」より 著者:有島武郎
になっていた。それに気がつくと清逸はきゅうに咳を喉許《のどもと》に感じて、思わず鼻先で手をふりながら座を立ち上った。 純次は何事も知らぬげに寝つづけていた。 ....
階段」より 著者:海野十三
居る先生が、それッと合図をした。僕は緊張に顔を赧くしてそれに答えると、その瞬間、鼻先に幼稚園がえりらしい女の子の赤い靴が小さい音をたてて時計の振子のように揺らい....
恐しき通夜」より 著者:海野十三
った。それには日没前まで、航空母艦『黄鷲』を中心とする航空戦隊が、赤軍の出てくる鼻先を、なんとかして喰い留めねばならなかったのだった。 儂達の戦闘第十三戦隊の....
火星兵団」より 著者:海野十三
やる気をおさえ、二、三回おなかをふくらませたりまた引込ませたりした上で、天狗岩の鼻先に腹ばいになった。そうして下を向いて淵をのぞきこんだが、何だか、ぶつぶつと泡....
火葬国風景」より 著者:海野十三
で二三歩ツツと下った。 ド――ン。 銃声一発。真白なモヤモヤした煙が八十助の鼻先に拡がった。それっきり、八十助の知覚は消えてしまったのだ。……随って今のとこ....
浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
。 太い鋼索をたよりに、昇降階段をすべるように駈けおりていたとき、とつぜん彼の鼻先にどーんと大きな音がして、空中に赤と青との星がばらばらと散った。花火だ。 「....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
肩を揺った。が、閉ったばかり、いささかも長い幕間でない事が、自分にも可笑しいか、鼻先の手拭の結目を、ひこひこと遣って笑う。 様子が、思いも掛けず、こんな場所、....
黒百合」より 著者:泉鏡花
突けば折れるばかりの巌の裾をごしごしごしごしと掻※る。時に手を留めてその俯向いた鼻先と思う処を、爪をあつめて巌の欠を掘取ると見ると、また掻きはじめた。その爪の切....
明日」より 著者:井上紅梅
一声言ったまま元のように眼を閉じた。睡ってしまったのだろう。しばらく睡ると、額や鼻先から玉のような汗が一粒々々にじみ出たので、彼女はこわごわさわってみると、膠の....
端午節」より 著者:井上紅梅
かる。五月四日の午前に迫って彼は役所から帰って来ると、彼女は一攫みの勘定書を彼の鼻先に突きつけた。これは今までにないことである。 「すっかり〆め上げると百八十円....
風波」より 著者:井上紅梅
分ひとりで慌てたところがしようがないのでたちまち恨みを七斤に移し、箸を取って彼の鼻先きへつきつけ「これは腑抜けのお前が自分で撒いた種だよ。わたしはとうから言って....
余齢初旅」より 著者:上村松園
た。 役者の顔の隈取りはとても日本ではみられないおもしろさがあった。道化役者の鼻先を朱で塗り、そしてまた頬のあたりをすみと胡粉とで一、二筆線を入れたり前額のと....