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齦
「齦〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
齦の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
》あたりまでは、死ぬのかと思っていたけれど、――」
母は腹痛をこらえながら、歯
齦《はぐき》の見える微笑をした。
「帝釈様《たいしゃくさま》の御符《ごふ》を頂い....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
て胸に抱き取った。乳房をあてがって見たが乳は枯れていた。赤坊は堅くなりかかった歯
齦《はぐき》でいやというほどそれを噛《か》んだ。そして泣き募った。
「腐孩子《く....
「星座」より 著者:有島武郎
らつくろうような笑顔を見せた。口をゆるめると、今まで固く噛み合っていた歯なみが歯
齦《はぐき》からゆるみでるい軽い痛みを感じた。
不断はいかにも平民的で、高等学....
「鼻」より 著者:ゴーゴリニコライ
手が違って、やり難かったけれど、それでもまあ、ざらざらした親指を相手の頬と下|歯
齦《はぐき》にかけただけで、ついに万難を排して、ともかくも剃りあげたものである。....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
機械的に動いていって、振子の上に布片《ぬのきれ》を幾重にも捲き、その先の剣針を歯
齦《はぐき》の間に置いて、狙いを定めくらの咽喉《のど》深くにグサリと押し込んだ。....
「軍用鮫」より 著者:海野十三
と銅鑼《どら》を聞かせますと、彼らの恐ろしき牙は、ただちにきりきりとおっ立ち、歯
齦《はぐき》のあたりから鋼鉄を熔かす性質のある唾液が泉のように湧いてくるのであり....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
く塗った顔をわざと物凄く見せるように、その眼のふちを青くぼかしていた。口唇にも歯
齦にも紅を濃く染めて、大きい口を真っ紅にみせていた。とんだ芝居をする奴だと、かれ....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
覚喪失だ。だいたい廻転椅子がどうだろうがこうだろうが、結局あの蒼白く透き通った歯
齦を見ただけで、僕は辞表を賭けてもいいと思う。まさしく単純失神と断言して差支えな....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
れまでのドドには決してみられなかった、一種異様な激情のさまを呈している。犬歯を歯
齦まで鉤のようにむきだして、瞳は充血で金色にひかっている。そして、ひくい唸り声を....
「武装せる市街」より 著者:黒島伝治
の若者が、一人採用される。と、その代りマッチ工場独特の骨壊疽にかかった老人や、歯
齦が腐って歯がすっかり抜け落ちてしまった勤続者や、たびたびの火傷に指がただれ膿ん....
「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
かネ、わたしはこの街にくっついている煤みたいな男でさあ」 といって彼は歯のない
齦を見せて笑った。 「しかしヒルミ夫人の冷蔵鞄のことについては、この街中で誰より....
「露肆」より 著者:泉鏡花
ぞ、お試し下さい、ねえ、是非一回御試験が仰ぎたい。口中に熱あり、歯の浮く御仁、歯
齦の弛んだお人、お立合の中に、もしや万一です。口の臭い、舌の粘々するお方がありま....
「絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
その――いやに紫ずんでいて、そこには到底、光も艶もうけつけまいと思われるような歯
齦だけのものが、銅味に染んだせいかドス黒く溶けて、そこが鉄漿のように見える。そし....
「方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
立ちあがる。ことに、夜のお祖母さまの怪ものめいた相貌――。入歯をとったあとの、歯
齦がお鉄漿のようにみえ、結ぶと、口からうえがくしゃくしゃに縮まり、顔の尺に提燈が....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
老いを忘れ、あの厭わしい情念の囚虜となっているのだった。 その深い皺、褪せた歯
齦を見ると、それに命を取る病気の兆候を見出したような気がして、年老いて情慾の衰え....