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とろとろ
「とろとろ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
とろとろの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
の教官室の椅子《いす》にストオヴの火を眺めていた。ストオヴの火は息をするように、
とろとろと黄色《きいろ》に燃え上ったり、どす黒い灰燼《かいじん》に沈んだりした。....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
うに思われる……まだその上に、小橋を渡る跫音が、左右の土塀へ、そこを蹈むように、
とろとろと響いて、しかもそれが手に取るように聞こえるのである。 ――このお話を....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
と、私のために簪の柄を刺して、それから、皮を取って、裂目を入れて、両つに分けて、
とろとろと唇が触ったか、触らない中に―― いまの※鼠、田鼠の形を、およそ三百倍....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
この美しいのが……と思う嬉しさに、……今の身で、恥も外聞もございません。筋も骨も
とろとろと蕩けそうになりました。…… 枕頭の行燈の影で、ええ、その婦が、二階廻....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
真蒼な酒のようで、空は、」 と白い掌を、膝に仰向けて打仰ぎ、 「緑の油のよう。
とろとろと、曇もないのに淀んでいて、夢を見ないかと勧めるようですわ。山の形も柔か....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
らちらと蝋燭の灯に瞬きたまう。 ――茫然として、銑吉は聞いていた―― 血は、
とろとろと流れた、が、氷ったように、大腸小腸、赤肝、碧胆、五臓は見る見る解き発か....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
で優しくって、穏当で、人柄で、まことに愛くるしい、人好のする、私なんか女じゃが、
とろとろとするほど惚れていました。その腹の貢さんじゃ。これがまた女の中で育ったと....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
彼岸は過ぎたぞ。――いや、奥方様、この姥が件の舌にて舐めますると、鳥獣も人間も、
とろとろと消えて骨ばかりになりますわ。……そりゃこそ、申さぬことではなかった。お....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
お爺さん、それは見ていなかったかい。」 「なまけもんだ、陽気のよさに、あとはすぐ
とろとろだ。あの潰屋の陰に寝ころばっておったもんだでの。」 白鷺はやがて羽を開....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
杭から、友染の切を流した風情で、黄昏を翡翠が一羽。 それをこう視めた時、いつも
とろとろと、眠りかけの、あの草の上、樹の下に、美い色の水を見る、描いたるごとき夢....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
へ――熊に乗って、黒髪を洗いに来た山女の年増がござった。裸身の色の白さに、つい、
とろとろとなって、面目なや、ぬらり、くらりと鰭を滑らかいてまつわりましたが、フト....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
りません。はかない、悲しい、あるいは床しい、上品な唄、踊、舞を見て、魂とともに、
とろとろに酔って行く。……あの体で。……あでやかな鬼の舞を視ながら、英雄が酔っぱ....
「若菜のうち」より 著者:泉鏡花
安煙草の匂のかわりに、稲の甘い香が耳まで包む。日を一杯に吸って、目の前の稲は、
とろとろと、垂穂で居眠りをするらしい。 向って、外套の黒い裙と、青い褄で腰を掛....
「隣の嫁」より 著者:伊藤左千夫
勝手知ってる家だから、足さぐりに行っても子細はない。風呂の前の方へきたら釜の火が
とろとろと燃えていてようやく背戸の入り口もわかった。戸が細目にあいてるから、省作....
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
か、いや聞くまい、明日は早々お暇《いとま》としよう……。 いつしか疲れを覚えて
とろとろとしたと思うと、さすがに田舎だ、町ながら暁を告る鶏の声がそちこちに聞える....