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一つ一つ
「一つ一つ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一つ一つの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「日光小品」より 著者:芥川竜之介
職工の大きな掛声、薄暗い工場の中に雑然として聞えるこれらの音が、気のよわい私には
一つ一つ強く胸を圧するように思われる――裸体の一人が炉のかたわらに近づいた。汗で....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
吐息《といき》の音ばかりであった。
やがて老婆は立ち上って、明るい油火の燈台を
一つ一つ消して行った。後には炉《ろ》に消えかかった、煤臭《すすくさ》い榾《ほた》....
「或る女」より 著者:有島武郎
ててあった。葉子は袖《そで》を顔から放して、気持ちの悪い幻像を払いのけるように、
一つ一つその看板を見迎え見送っていた。所々《ところどころ》に火が燃えるようにその....
「或る女」より 著者:有島武郎
はどこに絶頂があるのかわからなかった。二人だけで世界は完全だった。葉子のする事は
一つ一つ倉地の心がするように見えた。倉地のこうありたいと思う事は葉子があらかじめ....
「卑怯者」より 著者:有島武郎
ぞろと跟《つ》いて来て、皮肉な眼つきでその子供を鞭《むちう》ちながら、その挙動の
一つ一つを意地悪げに見やっていた。六つの子供にとって、これだけの過失は想像もでき....
「星座」より 著者:有島武郎
ったが。
時計台のちょうど下にあたる処にしつらえられた玄関を出た。そこの石畳は
一つ一つが踏みへらされて古い砥石《といし》のように彎曲《わんきょく》していた。時....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
は店の者と購買者との影が綾を織った。それは君にとっては、その場合の君にとっては、
一つ一つ見知らぬものばかりのようだった。そこいらから起こる人声や荷橇の雑音などが....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
なって何んの用もないものだと気が付いた。クララはふとその宝玉に未練を覚えた。その
一つ一つにはそれぞれの思出がつきまつわっていた。クララは小箱の蓋に軽い接吻を与え....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
人間は、もともと家族から発達したいわゆる種族の小さな範囲内に生活していた。それで
一つ一つの種族が自分だけでこの広大な外界から獲得することのできた経験の総和は到底....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
中に於けるよりも、遥かに多く神の働きにつきて知ることができた。死後の世界に於て、
一つ一つ階段を登るにつれて、より多く神の愛、神の智慧の無量無辺際であることが判っ....
「燕と王子」より 著者:有島武郎
み上げているとか、むすめの群れがおどりながら現われたとか、およそ町に起こった事を
一つ一つ手に取るように王子にお話をしてあげました。王子はだまったままで下を向いて....
「「菊池寛全集」の序」より 著者:芥川竜之介
リメよりも偉大であるが、メリメよりも芸術家ではないと云う。云う心はメリメよりも、
一つ一つの作品に渾成の趣を与えなかった、或は与える才能に乏しかった、と云う事実を....
「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
た。」 この種々の物体というのは、空気、フリントガラス、水晶、氷洲石で、朝から
一つ一つ取りて試みを取った。これは以前、光学器械に用うるガラスの研究をしたときに....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
の歴史を自己の中に蔵めている。各個の人間は、物の鏡、事実の鏡であって、宇宙の中で
一つ一つの小天地をつくっている。しかし、試みに旅に出てみよ。雑多な民族が、到る処....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
山々峰々が碧瑠璃の虚空へ宛然定規など置いたように劃然と際立って聳えて見える。その
一つ一つを選択するのである。すぐに決定する。歩み出すとき、軽々しい足取りが思わず....