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一掬
「一掬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一掬の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「狂言の神」より 著者:太宰治
りほかには意志表示の仕方を知らぬ怜悧《れいり》なるがゆえに、慈愛ふかきがゆえに、
一掬《いっきく》の清水ほど弱い、これら一むれの青年を、ふびんに思うよ。死ぬるがい....
「明暗」より 著者:夏目漱石
う》な事実がなかった。したがって明暸な言葉が口へ出て来なかった。そこを津田がまた
一掬《ひとすく》い掬った。
「おおかたお前の体面に関わるような不始末でもすると思....
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
ものらしいが、ついに決心したものと見えて、焦《こ》げのなさそうなところを見計って
一掬《ひとしゃく》いしゃもじの上へ乗せたまでは無難《ぶなん》であったが、それを裏....
「海異記」より 著者:泉鏡花
、大きな山へ――駈上るだ。 百尋ばかり束ね上げた鮪縄の、舷より高かったのがよ、
一掬いにずッと伸した! その、十丈、十五丈、弓なりに上から覗くのやら、反りかえっ....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
、薄情と云わば云え、又止むを得ない事ではなかろうか。筆者は薄幸なりし彼女の半生に
一掬の涙を濺ぐに止まって、敢て彼女を責めようとはせぬ。 さわれ、取残された獄中....
「故郷」より 著者:豊島与志雄
の時、人を救うものは、日出の壮厳さや蒼空の深みや星の光などよりも寧ろ、オアシスの
一掬の清水であろう。砂漠のオアシスは蜃気楼であることもある。それだからといって、....
「化生のもの」より 著者:豊島与志雄
もウイスキーをちょっぴりさして、匙ですくっては味をみ、またちょっぴりさして、匙で
一掬いずつ味をみていた。子供が戯れに味わってるみたいで、銀の匙と小さな爪とが光り....
「紫大納言」より 著者:坂口安吾
だは、わがてのひらの水の中へ、頭を先にするりとばかりすべりこみ、そこに溢れるただ
一掬の水となり、せせらぎへ、ばちゃりと落ちて、流れてしまった。....
「理想の女」より 著者:坂口安吾
をめざして身悶えながら、汚辱にまみれ、醜怪な現実に足をぬき得ず苦悶悪闘の悲しさに
一掬の涙をそゝぎ得ぬのか。然り。そゝぎ得ぬ筈だ。おん身らは、かゝる苦闘を知らない....
「妾の半生涯」より 著者:福田英子
人の世のあじきなさ、しみじみと骨にも透《とお》るばかりなり。もし妾のために同情の
一掬《いっきく》を注《そそ》がるるものあらば、そはまた世の不幸なる人ならずばあら....
「雪の宿り」より 著者:神西清
も湧いて参ります。旧き代の富貴、栄耀の日ごとに毀たれ焼かれて参るのを見るにつけ、
一掬哀惜の涙を禁めえぬそのひまには、おのずからこの無慚な乱れを統べる底の力が見き....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
形を改めた親分乾児は、むくろをしずかにしずかに井戸の底へ返した。藤吉の手が最初に
一掬いの土を落した。勘次と彦兵衛が狂気《きちがい》のように急いで穴を埋めた。道六....
「穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
半里で、連嶺第二の低地、その先きは盆地で沢山の残雪、雪解けの水も流れている。水を
一掬び勢をつけて、難なく三千三十米突の一峰を踏む、頂には石を重ねた測標が一つある....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
って水底に在る白い石と黒い石が玉のごとくに見えて居ります。喉が乾いて居りますから
一掬い飲んで見ると手は縮み上がる程冷たいので、二度と掬って飲む勇気がなかった。馬....
「新古細句銀座通」より 著者:岸田劉生
端的に極端に要求される事がなくなって行く。茶の湯の水が、どこの井戸の水であるかを
一掬もって味わいわけたというような又は家を捨て妻を捨て娼婦と心中するというような....