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「一縷〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

一縷の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
尾生の信」より 著者:芥川竜之介
波の下に没してしまった。が、女は未だに来ない。 尾生は水の中に立ったまま、まだ一縷《いちる》の望を便りに、何度も橋の空へ眼をやった。 腹を浸《ひた》した水の....
偸盗」より 著者:芥川竜之介
彼は、事によったら、犬が追いあぐんで、どこかに逃げ場ができるかもしれないという、一縷《いちる》の望みにたよりながら、打ちはずした太刀を引いて、おりから足をねらっ....
或る女」より 著者:有島武郎
で行くのだった。 しかし倉地は知らず、葉子に取ってはこのいまわしい腐敗の中にも一縷《いちる》の期待が潜んでいた。一度ぎゅっとつかみ得たらもう動かないある物がそ....
奈々子」より 著者:伊藤左千夫
いう声は、家じゅうに息を殺させた。それで医者ならば生き返らせることができるかとの一縷《いちる》の望みをかけて、いっせいに医者に思いをあつめた。自分はその時までも....
夜行巡査」より 著者:泉鏡花
していっせいに南に靡《なび》くこと、はるかあなたにぬっくと立てる電燈局の煙筒より一縷《いちる》の煙の立ち騰《のぼ》ること等、およそ這般《このはん》のささいなる事....
水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
ぬまでになお幾日かの間があるとすれば、その間に処する道を考えねばならぬ。いわんや一縷の望みを掛けているものならば、なおさらその覚悟の中に用意が無ければならぬ。 ....
月世界探険記」より 著者:海野十三
のは一行だった。思いがけなく、旧い型ではあるが宇宙艇が手に入ったので、地球へ帰る一縷の望みができてきた。調べてみると、何という幸いだろう。燃料はかなり十分に貯え....
妖僧記」より 著者:泉鏡花
まで送り届けし後、杉の根の外に佇みて、例の如く鼻に杖をつきて休らいたり。 時に一縷の暗香ありて、垣の内より洩れけるにぞ法師は鼻を蠢めかして、密に裡を差覗けば、....
化銀杏」より 著者:泉鏡花
注せば、渠は立処に絶して万事|休まむ。 光を厭うことかくのごとし。されば深更|一縷の燈火をもお貞は恐れて吹消し去るなり。 渠はしかく活きながら暗中に葬り去ら....
岡本一平論」より 著者:岡本かの子
」が添います。これは、決して、虚飾や、阿諛からではなくて、如何なる場合にも他人に一縷の逃げ路を与えて寛ろがせるだけの余裕を、氏の善良性が氏から分泌させる自然の滋....
くろん坊」より 著者:岡本綺堂
夜に、その髑髏はさながら嘲り笑うようにからからと鳴った。 今までは不安ながらも一縷の望みをつないでいたのであるが、その縁談がいよいよ破裂と定まって源兵衛夫婦の....
親ごころ」より 著者:秋田滋
体がいよいよ弱くなって、彼はめッきり年をとった。そして、彼が心ひそかに念じている一縷の望みも日一日と崩れて行くのだった。いまはもう、教会へお勤めに来る人はひとり....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
十三 橘之助は垢の着かない綺麗な手を胸に置いて、香の薫を聞いていたが、一縷の煙は二条に細く分れ、尖がささ波のようにひらひらと、靡いて枕に懸った時、白菊....
父の墓」より 著者:岡本綺堂
なりき。泉下の父よ、幸に我を容せと、地に伏して瞑目合掌すること多時、頭をあぐれば一縷の線香は消えて灰となりぬ。 低徊|去るに忍びず、墓門に立尽して見るともなし....
鴎外博士の追憶」より 著者:内田魯庵
意の色を漲らした。 鴎外が抽斎や蘭軒等の事跡を考証したのはこれらの古書校勘家と一縷の相通ずる共通の趣味があったからだろう。晩年一部の好書家が※斎展覧会を催した....