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「一通〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

一通の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
り》と窓からさす朝日の光との中に、糢糊《もこ》として動いている。そのまた騒ぎが、一通りではない。第一に湯を使う音や桶を動かす音がする。それから話し声や唄の声がす....
疑惑」より 著者:芥川竜之介
ざわざ推参致したのでございます。いかがでございましょう。御退屈でも私の身の上話を一通り御聴き取り下さる訳には参りますまいか。」 私は答に躊躇《ちゅうちょ》した....
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
生涯で、たった一度の不思議な出来事を御話し致そうかと存じて居ります。が、その前に一通り、思いもよらない急な御病気で、大殿様が御薨去《ごこうきょ》になった時の事を....
」より 著者:芥川竜之介
ちごん》も、口を開かせない不機嫌《ふきげん》さがあった。今西は冷かに目礼すると、一通の封書を残したまま、また前のように音もなく、戸の向うの部屋へ帰って行った。 ....
開化の良人」より 著者:芥川竜之介
もなく断《ことわ》ってしまうのです。しかもそのまた彼の愛《アムウル》なるものが、一通りの恋愛とは事変って、随分《ずいぶん》彼の気に入っているような令嬢が現れても....
或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
いだ》……」――これがその仔細の全部であった。しかし血に染んだ遺書の中には、もう一通の書面が巻きこんであった。甚太夫はこの書面へ眼を通すと、おもむろに行燈をひき....
袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
かけよう。己は果して袈裟を愛しているだろうか。 が、その答をする前に、己はまだ一通り、嫌《いや》でもこう云ういきさつを思い出す必要がある。――渡辺の橋の供養の....
奇遇」より 著者:芥川竜之介
意だから、この際君に一切の事情をすっかり打ち明けてしまおうと思う。退屈でもどうか一通り、その女の話を聞いてくれ給え。 「僕は君が知っている通り、松江《しょうこう....
黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
稲見には曽祖母《そうそぼ》に当る、その切髪《きりがみ》の隠居の心配と云うものは、一通《ひととお》りや二通《ふたとお》りではありません。が、いくら医者が手を尽して....
黄粱夢」より 著者:芥川竜之介
らしく髭を撫でた。 「では、寵辱《ちょうじょく》の道も窮達《きゅうたつ》の運も、一通りは味わって来た訳ですね。それは結構な事でした。生きると云う事は、あなたの見....
温泉だより」より 著者:芥川竜之介
うのはその秋の彼岸《ひがん》の中日《ちゅうにち》、萩野半之丞は「青ペン」のお松に一通の遺書《いしょ》を残したまま、突然|風変《ふうがわ》りの自殺をしたのです。で....
猿蟹合戦」より 著者:芥川竜之介
加えるように、さんざんその柿を投げつけたと云う。しかし蟹は猿との間《あいだ》に、一通の証書も取り換《か》わしていない。よしまたそれは不問《ふもん》に附しても、握....
将軍」より 著者:芥川竜之介
げているのだ。」――田口一等卒は身構えながら、こうその叩頭を解釈した。 叩頭が一通り済んでしまうと、彼等は覚悟をきめたように、冷然と首をさし伸した。田口一等卒....
俊寛」より 著者:芥川竜之介
将や康頼《やすより》はおれより先に、もう船の側へ駈けつけていたが、この喜びようも一通りではない。現にあの琉球人なぞは、二人とも毒蛇《どくじゃ》に噛《か》まれた揚....
ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
てある物語で想像されるあらゆる苦痛より遥かに苦しい気がした。 最後に私の手には一通の手紙が残った。それは私の書いたもので、私が五十年前に習字の先生の言葉を書き....