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「一雫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

一雫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
今度は、雪まじりに鳥の羽より焼屑が堆い処を見着けて、お手向にね、壜の口からお酒を一雫と思いましたが、待てよと私あ考えた、正覚坊じゃアあるめえし、鴛鴦が酒を飲むや....
婦系図」より 著者:泉鏡花
れをかれこれ申上げるわけではないのです。 ところが、差当り、今目の前に、貴女の一雫の涙を頂かないと、死んでも死に切れない、あわれな者があるんです。 この事に....
海異記」より 著者:泉鏡花
いてさ、」と女房は首垂れつつ、 「私にゃ何にもいわないんだもの……」と思わず襟に一雫、ほろりとして、 「済まないねえ。」 奴は何の仔細も知らず、慰め顔に威勢の....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
麗さは、月宮殿の池ほどござり、睫が柳の小波に、岸を縫って、靡くでしゅが。――ただ一雫の露となって、逆に落ちて吸わりょうと、蕩然とすると、痛い、疼い、痛い、疼いッ....
黒百合」より 著者:泉鏡花
膝下に、うつぎの花に埋もれて蹲る清い膚と、美しい黒髪とが、わななくのを見た。この一雫が身に染みたら、荒鷲の嘴に貫かれぬお雪の五体も裂けるであろう。 一言の答え....
南地心中」より 著者:泉鏡花
見附けた――屋台が道頓堀を越す頃から、橋へかけて、列の中に、たらたら、たらたらと一雫ずつ、血が落ちていると云うのである。 二十九 一人多い、その....
妖術」より 著者:泉鏡花
に後れは取らぬ、と肩の聳ゆるまで一人で気競うと、雨も霞んで、ヒヤヒヤと頬に触る。一雫も酔覚の水らしく、ぞくぞくと快く胸が時めく…… が、見透しのどこへも、女の....
高原の太陽」より 著者:岡本かの子
黄金の滝のように咲き枝垂れている八重山吹の花むらであった。陽は午後の円熟した光を一雫のおしみもなく、その旺溢した黄金色の全幅にそそぎかけている。青年は画家が真に....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
、むしろ此の都全体なのだ。 此の都の魅力に対する憎みを語って語り抜いて彼女から一雫でも自分の為めに涙を流して貰ったら、それこそ自分の骨の髄にまで喰い込んでいる....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
限大を以てして一滴の露に宿るを厭わぬ爾朝日! 須臾の命を小枝に托するはかない水の一雫、其露を玉と光らす爾大日輪! 「爾の子、爾の栄を現わさん為に、爾の子の栄を顕....
変な男」より 著者:豊島与志雄
仕返しをしてやるわ。こないだなんか、ウェストミンスターの煙草の袋に、アンモニアを一雫垂らしといてやったの。そりゃあ可笑しかったわ。この煙草は臭い臭いって大騒ぎな....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
たいために危険を冒《おか》して来たのではないけれども、人の情に対する感謝の美しい一雫《ひとしずく》を見たいものと思わないではなかったのに、この人は、情というもの....
虞美人草」より 著者:夏目漱石
うたがい》を路上に受くるような気がする。 過去へ帰ろうか。水のなかに紛れ込んだ一雫《ひとしずく》の油は容易に油壺《あぶらつぼ》の中へ帰る事は出来ない。いやでも....
こころ」より 著者:夏目漱石
暗黒な一点を印《いん》するに忍びなかったから打ち明けなかったのです。純白なものに一雫《ひとしずく》の印気《インキ》でも容赦《ようしゃ》なく振り掛けるのは、私にと....
文鳥」より 著者:夏目漱石
を飲むところを見た。細い足を壺の縁《ふち》へ懸《か》けて、小《ちさ》い嘴に受けた一雫《ひとしずく》を大事そうに、仰向《あおむ》いて呑《の》み下《くだ》している。....