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上潮
「上潮〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
上潮の前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「縮図」より 著者:徳田秋声
る時分には、すでに寂れていた。ちょうど千葉|街道に通じたところで水の流れがあり、
上潮の時は青い水が漫々と差して来た。伝馬や筏、水上警察の舟などが絶えず往き来して....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
いても、なんだか亀が陰険でいやだ。 夏の下町の風情《ふぜい》は大川から、夕風が
上潮《あげしお》と一緒に押上げてくる。洗髪、素足《すあし》、盆提灯《ぼんちょうち....
「幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
人間の運命とを一緒にして考えた古人の思想が、嬉しく胸に蘇ってきた。人が生れるのは
上潮《あげしお》の時だ、そういうことまで思い出された。
上潮だ、
上潮だ!……星....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
ころがちょうど引汐時であったから、それへ荷物をウーンと出したものだ。すると、また
上潮になって来て、荷物は浮いて流れ出す。……それを縄で括って流すまいとするその大....
「魔都」より 著者:久生十蘭
木がカチカチ、嚔《くしゃみ》一つして通り過ぎた後は夜気沈々、聞こえるものは折柄の
上潮がヒタヒタと岸を打つ音ばかり。
あたかもこのころ、言問橋の方から疾駆して来....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
きどきサーッと時雨《しぐ》れてくる。むこう岸はボーッと雨に煙り、折からいっぱいの
上潮で、柳の枝の先がずっぷり水に浸《つ》かり、手長蝦だの舟虫がピチャピチャと川面....
「おせん」より 著者:邦枝完二
た男前の、結いたての髷を川風に吹かせた格好は、如何にも颯爽としていた。 折柄の
上潮に、漫々たる秋の水をたたえた隅田川は、眼のゆく限り、遠く筑波山の麓まで続くか....
「鯛釣り素人咄」より 著者:佐藤垢石
、方向によってフケがきている。即ち、大きな弧を描いてたるんでいるのである。殊に、
上潮と底潮と流れの方向が違うときは、道糸は複雑なフケの状態にあると思わねばならな....
「ノンシャラン道中記」より 著者:久生十蘭
たこと…… 折柄《おりから》、窓のそとは満潮《グラン・マレ》で、あぶくを載せた
上潮の※《うねり》が、くどくどと押し返し、巻きかえし、いつ果てるとも見えない有様....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
か知れねえから、殴り倒してやろうと思い、手頃の板子を一枚持って、止せば宜いのに、
上潮ばなで船がガッシリ岸へ着いて居りまするから、仙太は身軽にひらりと岸へ飛び上り....