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中物
「中物〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
中物の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
かさを感ずるままに重い縮緬《ちりめん》の羽織《はおり》を脱ぎ捨てて、ありたけの懐
中物を帯の間から取り出して見ると、凝りがちな肩も、重苦しく感じた胸もすがすがしく....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
もその判断が付かなかった。第一、自分を殴り倒した奴は何者であろう。物取りならば懐
中物を奪って立ち去りそうなものであるが、身に着けた物はすべて無事である。お糸はや....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
に見せてくれ」 「見せてくれ……」と、男は眼をひからせて半七を睨んだ。「ひとの懐
中物をあらためてどうするのだ。おめえは巾着切りか、追剥ぎか」 「追剥ぎはそっちか....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
達した盗賊が水の底にかくれていて、錦の帯を囮に往来の旅人を引き摺り込んで、その懐
中物や着物をみんな剥ぎ取るのだろうと云うんです。まあ、どっちにしても気味のよくな....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ぎわまで引き摺って行ったらしいが、人が来たのでそのままにして逃げたと見えます。懐
中物はなんにも無いので、ちっとも手がかりになりそうな物はありません」 「その死骸....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
を。――もう一杯、もう一ツ。」 と立続けに、五ツ六ツ。ほッと酒が色に出ると、懐
中物を懐へ、羽織の紐を引懸けて、ずッと立った。 「早瀬は涙を乾かしてから外へ出ろ....
「駆逐されんとする文人」より 著者:内田魯庵
ば足を踏まれる、車が停ったり動いたりする度毎にヨロ/\する、其間には車掌が『御懐
中物の御用心!』と号令を掛ける。足を踏まれまいと用心し、ヨロ/\しまいと用心し、....
「のろのろ砲弾の驚異」より 著者:海野十三
いつまでたっても、奥へ通れない。さあ遠慮なく、こうして突きとばすですな。しかし懐
中物だけは要慎したがいいですぞ。突きとばされるのを予め待っていて、突きとばされる....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
になった紬の黒の紋着を着て、紺足袋を穿いた、鉄色の目立たぬ胸紐を律義に結んで、懐
中物を入れているが、夕涼から出懸けたのであろう、帽は被らず、髪の短かいのが漆のよ....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
る。そんなものが匣の大半を埋めていて、その上積のようになって、やや大型の女持の懐
中物がある。 それは錦襴地の色の褪めた紙入であるが、開けてみると長方形の小さな....
「赤格子九郎右衛門の娘」より 著者:国枝史郎
ね。何を一体|縮尻たんだえ?」 「何ね中之島の蔵屋敷前で、老人の武士を叩斬り、懐
中物を抜いたはいいが、桜川辺りの往来でそいつを落としてしまったんだ。つまらない目....
「死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
羽から、袷、襦袢から、帯まで無く成っていた。それのみならず残して置いた大刀や、懐
中物から手拭鼻紙まで、紛失していた。 「何者が、持去ったかっ」 磯貝竜次郎は裸....
「八犬伝談余」より 著者:内田魯庵
かな人情物に長じておる。線の太い歴史物よりは『南柯夢』や『旬殿実々記』のような心
中物に細かい繊巧な技術を示しておる。『八犬伝』でも浜路や雛衣の口説が称讃されてる....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
じの中で、さしむかいに食べられた時を思いますと、我もう、ここが、」 と大きな懐
中物で、四角に膨れた胸を撫でつつ、 「何ともいえないので、まるで熱鉄を嚥下す心持....
「耳香水」より 著者:大倉燁子
もつかず、着物も血に染んで肌にねばりついていました。指輪はもぎ取られ、時計も、懐
中物も、金目の物は悉く失くなっていました。その点だけでも強盗の仕業だということに....