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丸盆
「丸盆〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
丸盆の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
《さび》れていた。少し黴《かび》を持ったようにほこりっぽくぶくぶくする畳の上には
丸盆の上に大学病院から持って来た薬びんが乗せてあった。障子ぎわには小さな鏡台が、....
「彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
間使がした。鎌倉から帰って、始めてわが家の膳《ぜん》に向った時、給仕のために黒い
丸盆を膝《ひざ》の上に置いて、僕の前に畏《かし》こまった作の姿を見た僕は今更《い....
「明暗」より 著者:夏目漱石
の滑《なめ》らかな表面に流れる華麗《はなやか》な模様の色、卓上に運ばれた銀きせの
丸盆、同じ色の角砂糖入と牛乳入、蒼黒《あおぐろ》い地《じ》の中に茶の唐草《からく....
「野分」より 著者:夏目漱石
六畳の座敷は、畳がほけて、とんと打ったら夜でも埃《ほこ》りが見えそうだ。宮島産の
丸盆に薬瓶《くすりびん》と験温器《けんおんき》がいっしょに乗っている。高柳君は演....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
◯墓地だけに八十発おちていた。 ◯焼夷弾のカゴの大座金は、厚さ二センチ位の大きい
丸盆の大きさ。二階から屋根をぬいて階下におち、あるいは平屋の屋根を通って床下にま....
「天主閣の音」より 著者:国枝史郎
ている一筋の糸を、グイと掴んで引っ張った。と、天井からスルスルと、茶器を載っけた
丸盆が、身揺ぎもせず下りて来た。 「おおおお鉄瓶はどうしたえ。湯が無けりゃァ茶は....
「縮図」より 著者:徳田秋声
われ、それが幻覚であったようにも思われた。少し吐いたとみえて、嗽い茶碗や濡手拭が
丸盆の上にあった。 昼少し過ぎに、マダムの容態に何か変化が来たのか、昨夜呼ばれ....
「明るい海浜」より 著者:宮本百合子
ぞ上って下さい」 「ええ、ありがと」 婆さんが出てから振返って見ると、朱塗りの
丸盆の上に椀と飯茶碗と香物がのせられ、箱火鉢の傍の畳に直《じか》に置いてあった。....
「伸子」より 著者:宮本百合子
たまま耳を澄した。 「――御免なさい」 伸子は、その声を聞くと、糊をといてある
丸盆を飛び越えて玄関へ出た。 「姉さんいる?」 「いるとも!」 「やあ――今日は....
「三郎爺」より 著者:宮本百合子
瞳を定めて見ると、大きいばかりでなく、色差しも何だかいつもとは違う。まるで朱塗の
丸盆のようにどす赤い月が、ビクともしないで、いつまで経っても同じ梢に止まっている....
「初恋」より 著者:矢崎嵯峨の舎
の湯は沸き返ッたが、老婆は、ヒビだらけな汚ない茶碗へ湯を汲んで、それを縁の欠けた
丸盆へ載せて出した。自分は喉が渇いていたから、器のきたないのも何も知らず、ぐッと....
「浅間噴火口」より 著者:豊島与志雄
鮮なものに触れてきたような様子だった。 彼はそこに大きな盆を二枚差出した。木の
丸盆で、内側の周囲に桜の花が不器用に彫ってあった。 「おばさんにお土産です。こん....
「随筆 新平家」より 著者:吉川英治
を好むほど盛り取った皿である。音がしないがと、よく見ると、日本製のつまらない木の
丸盆なのだ。生活というものに、すぐウイットがこう働く。ぼくらの習慣は余りに固着が....