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丹念
「丹念〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
丹念の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「父」より 著者:芥川竜之介
キのポケットから、紫の打紐《うちひも》のついた大きなニッケルの懐中時計を出して、
丹念《たんねん》にそれと時間表の数字とを見くらべている。横顔だけ見て、自分はすぐ....
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
だけに年をとっても、どこか目などは美しかった。しかしこれも床の上に坐《すわ》り、
丹念に白足袋《しろたび》などを繕っているのは余りミイラと変らなかった。重吉はやは....
「子供の病気」より 著者:芥川竜之介
不用の書物を二冊渡し、これを金に換《か》え給えと云った。青年は書物を受け取ると、
丹念《たんねん》に奥附《おくづけ》を検《しら》べ出した。「この本は非売品と書いて....
「路上」より 著者:芥川竜之介
《しゅんすけ》はこう云う図書館の窓際の席に腰を下して、さっきから細かい活字の上に
丹念《たんねん》な眼を曝《さら》していた。彼は色の浅黒い、体格のがっしりした青年....
「少年」より 著者:芥川竜之介
まうと云うことはね、ほら、お前は蟻《あり》を殺すだろう。……」
父は気の毒にも
丹念《たんねん》に死と云うものを説明し出した。が、父の説明も少年の論理を固守《こ....
「或る女」より 著者:有島武郎
った。葉子は小さく舌打ちして、為替ごと手紙を引き裂こうとしたが、ふと思い返して、
丹念《たんねん》に墨をすりおろして一字一字考えて書いたような手紙だけずたずたに破....
「星座」より 著者:有島武郎
卓から胸にかけて麦《むぎ》たくさんなためにぽろぽろする飯をこぼし散らかすと、母は
丹念にそれを拾って自分の口に入れた。母はいい母だがまったく教育がない。教育のない....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
から、煩かしいや。長火鉢の引出しから、紙にくるんだ、お前さん、仕つけ糸の、抜屑を
丹念に引丸めたのが出たのにゃ、お源坊が泣出した。こんなに御新造さんが気をつけてな....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
く船板を打つ。君は小ざかしい邪魔者から毛糸の襟巻で包んだ顔をそむけながら、配縄を
丹念におろし続ける。 すっと空が明るくなる。霰はどこかへ行ってしまった。そして....
「親子」より 著者:有島武郎
た。銀行から歳暮によこす皮表紙の懐中手帳に、細手の鉛筆に舌の先の湿りをくれては、
丹念に何か書きこんでいた。スコッチの旅行服の襟が首から離れるほど胸を落として、一....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
ぷりと注して、ちょっと口で吸って、莟の唇をぽッつり黒く、八枚の羽を薄墨で、しかし
丹念にあしらった。瀬戸の水入が渋のついた鯉だったのは、誂えたようである。 「出来....
「犬養君に就いて」より 著者:芥川竜之介
でいるつもりである。その又僕の読んだ作品は何れも手を抜いたところはない。どれも皆
丹念に出来上っている。若し欠点を挙げるとすれば余り
丹念すぎる為に暗示する力を欠き....
「錦紗」より 著者:犬田卯
村の巡査駐在所は隣部落――お梅やお民らの近くにあった。お通は昨日の道筋をさらに
丹念に探してから駐在所の方へ急いだ。と、どこかへ出かけようとする巡査が自転車で先....
「競馬」より 著者:犬田卯
らのぞき込んだ。塚田屋は時計師らしく前額の禿げ上ったてらてらした頭をうつむけて、
丹念に一個の金時計を眺めていた。 ――てんぷらもてんぷら、ひどいてんぷらだ。 ....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
た。この形。)と雪を、あの一塊……鳥冠を捻り、頸を据え、翼を形どり、尾を扱いて、
丹念に、でも、あらづもりの形を。――それを、おなじ雪の根の松の下へお置きなさると....