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乱雲
「乱雲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
乱雲の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
た亜麻の束を馬力に積もうとした。そこには華手《はで》なモスリンの端切《はぎ》れが
乱雲の中に現われた虹《にじ》のようにしっとり朝露にしめったまま穢《きた》ない馬力....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
だけが、ちらっと見えることがある。しかし主峰は、いつも四万フィートにもおよぶ大積
乱雲に覆われている。だいたいこれは、気象学の法則にないことで、二万五千フィートの....
「遺書」より 著者:尾崎秀実
ものであります。ただ私の態度は湖水の静かな水のようにその上を去来する白雲や時には
乱雲や鳥の影や、また樹影やらを去来のままに映し来り映し去って行きたいと思っていま....
「新ハムレット」より 著者:太宰治
いので、オフィリヤの事も念頭より離れず、それに今度の恐ろしい疑惑が覆いかぶさり、
乱雲が、もくもく湧き立ち、流れ、かさなり、僕の苦しみが三倍にも五倍にも、ふくれあ....
「小爆発二件」より 著者:寺田寅彦
て擾乱渦動の衰えることを示すと思われた。同時に煙の色が白っぽくなって形も普通の積
乱雲の頂部に似て来た、そうしてたとえば椎蕈の笠を何枚か積み重ねたような格好をして....
「恐竜島」より 著者:海野十三
へ流してくれるか安心はならなかった。 三百六十度、どこを見まわしても海と空と積
乱雲《せきらんうん》の群像《ぐんぞう》ばかりで、船影《ふなかげ》はおろか、島影一....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
形成する年経たる相貌《そうぼう》、それらが各瞬間ごとに、種々の体系や熱情や理論の
乱雲のうちに、そこに明滅している。それらの出現や消滅は、抵抗または運動と名づけら....
「女心の強ければ」より 著者:豊島与志雄
の静けさだ。 二階の縁側から、天城山が正面に見える。 西空から差し出てきた積
乱雲が、むくむくと脹れ上り、渦巻き黒ずみ、周辺の白銀の一線も消え、引きちぎられた....
「わが童心」より 著者:佐藤垢石
。 この山脈の上にはもう五月に入ると、いつも鈍い銀色の、雲の峰が立つ。そして積
乱雲は、夕|陽を映し受けて、緋布のように紅く輝くのを、私は子供の時から眺めてきた....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
、折あしく雨が続くのでそこを去った。そしてその夕、甲府を経て右左口にゆく途中で、
乱雲の間から北岳の一角を見て胸の透くのを覚えた。 翌日は右左口峠を登りつつ、雲....
「二つの松川」より 著者:細井吉造
飯田の町にすべり込んだ時、見えない中央アルプスの主稜とおぼしき方向にはさかんな積
乱雲の動きがあって、風越《ふうえつ》山の麓ではツクツクボウシが鳴いていたのである。....
「澪標」より 著者:外村繁
間が続く。前方に開いている長方形の空間には、馭者の背中がある。その上に、真白い積
乱雲が紺碧の空に躍り上っているのが見える。時には真正面に見える。時には半分以上も....
「つゆのあとさき」より 著者:永井荷風
《まっくら》に曇って、今にも雨が降って来そうに思われながら、烈風に吹きちぎられた
乱雲の間から星影が見えてはまた隠れてしまう。路傍の新樹は風にもまれ、軟《やわらか....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
州方面の山々は、淡い樺色に染まった高い巻雲層の下に、動くともなく屯している幾重の
乱雲に包まれて、唯だ四阿山であったろう、長い頂上を顛覆した大船のように雲の波の上....
「春の大方山」より 著者:木暮理太郎
曳いた茅戸の長い尾根の低い所まで雪が白い。其の奥の方で少し右に寄った所は、峰頭を
乱雲に包まれて、中腹以上の山肌を白く見せている此山脈の最高峰毛無山である。此山は....