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亀裂
「亀裂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
亀裂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
起って、一切の社会的束縛が地上から姿を隠した時、どうしてそれと共に私の道徳感情も
亀裂《きれつ》を生じなかったと申せましょう。どうして私の利己心も火の手を揚げなか....
「二つの手紙」より 著者:芥川竜之介
線と合しました。そうして、それとほとんど同時に、第二の私は丁度|硝子《ガラス》に
亀裂《きれつ》の入るような早さで、見る間に私の眼界から消え去ってしまいました。私....
「保吉の手帳から」より 著者:芥川竜之介
二階に脂臭《あぶらくさ》い焼パンを齧《かじ》っていた。彼のテエブルの前にあるのは
亀裂《ひび》の入った白壁《しらかべ》だった。そこにはまた斜《はす》かいに、「ホッ....
「星座」より 著者:有島武郎
父の顔……今年の夏休暇の終に見たその時の顔……その時、父と兄との間にはもう大きな
亀裂《きれつ》が入っていて、いつも以上に不機嫌になっていた。兄は病気の加減もあっ....
「国貞えがく」より 著者:泉鏡花
親父はその晩、一合の酒も飲まないで、燈火《ともしび》の赤黒い、火屋《ほや》の
亀裂《ひび》に紙を貼った、笠の煤《すす》けた洋燈《ランプ》の下《もと》に、膳を引....
「夜行巡査」より 著者:泉鏡花
に烈《はげ》しき泡《あわ》の吹き出ずるは老夫の沈める処《ところ》と覚しく、薄氷は
亀裂《きれつ》しおれり。 八田巡査はこれを見て、躊躇《ちゅうちょ》するもの一|....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
に展開されていたことだろう。 まず、目についたのは、恐ろしいアスファルト路面の
亀裂だ。落ちこめば、まず腰のあたりまで嵌ってしまうであろう。 その凄じい
亀裂の....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
体の男女が、入交りに波に浮んでいると、赫とただ金銀銅鉄、真白に溶けた霄の、どこに
亀裂が入ったか、破鐘のようなる声して、 「泳ぐもの、帰れ。」と叫んだ。 この呪....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
いる。が、真夏などは暫時の汐の絶間にも乾き果てる、壁のように固まり着いて、稲妻の
亀裂が入る。さっと一汐、田越川へ上げて来ると、じゅうと水が染みて、その破れ目にぶ....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
て崩れ出す筈のものであった。墓のなかで脹れあがった唇の皮はところどころに薄い赤い
亀裂が出来て、透明な雲母のようにぎらぎらしていた。おまけに、生まれつき頑丈な体は....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
履の音、ひた――ひた、と客を見て早や用意をしたか、蟋蟀の噛った塗盆に、朝顔茶碗の
亀裂だらけ、茶渋で錆びたのを二つのせて、 「あがりまし、」 と据えて出し、腰を....
「露肆」より 著者:泉鏡花
「大福、大福、大福かい。」 とちと粘って訛のある、ギリギリと勘走った高い声で、
亀裂を入らせるように霧の中をちょこちょこ走りで、玩弄物屋の婦の背後へ、ぬっと、鼠....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
浸込む時の――心細い、陰気でうんざりとなる気勢である。 「水差が漏るのかな……」
亀裂でも入っていたろう。 「洋燈から滲出すのか……」 可厭な音だ。がそれにして....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
勧めた林檎はいつか黄ばんだ皮の上へ一角獣の姿を現していた。(僕は木目や珈琲茶碗の
亀裂に度たび神話的動物を発見していた)一角獣は麒麟に違いなかった。僕は或敵意のあ....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
建の構だったのですが、頼む木蔭に冬空の雨が漏って、洋燈の笠さえ破れている。ほやの
亀裂を紙で繕って、崩れた壁より、もの寂しい。……第一石油の底の方に淀んでいる。…....