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五体
「五体〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
五体の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
、葉子の幼い時からの癖である夢ともうつつとも知れない音楽的な錯覚に陥って行った。
五体も心も不思議な熱を覚えながら、一種のリズムの中に揺り動かされるようになって行....
「或る女」より 著者:有島武郎
じを失ってはいなかったが、広い畳の間《ま》に大きな軟《やわ》らかい夜具をのべて、
五体を思うまま延ばして、一晩ゆっくりと眠り通したその心地《ここち》よさは格別だっ....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
やいば》に歯向う獣のように捨鉢《すてばち》になって彼れはのさのさと図抜けて大きな
五体を土間に運んで行った。妻はおずおずと戸を閉《し》めて戸外に立っていた、赤坊の....
「星座」より 著者:有島武郎
知らずだんだんに踏み越えていった。しびれるような欲望の熱感が健康すぎるほどな彼の
五体をめぐり始めた。
色慾の遊戯に慣れた渡瀬には、恋愛などというしゃら臭いもの....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
ばして、雲を霞《かすみ》と走りければ、美人は魂身に添わず、目を閉じ、息を凝らし、
五体を縮めて、力の限り渠の腰に縋《すが》りつ。風は※々《しゅうしゅう》と両腋《り....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
りを打って※とくずれこんだ。 はっと思ったその時おそく、君らはもうまっ白な泡に
五体を引きちぎられるほどもまれながら、船底を上にして顛覆した船体にしがみつこうと....
「三つの窓」より 著者:芥川竜之介
士官だったA中尉はSと云う水兵に上陸を許可した。それは彼の小鼠を一匹、――しかも
五体の整った小鼠を一匹とったためだった。人一倍体の逞しいSは珍しい日の光を浴びた....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
アの神の玉座の前に引き出された。そこでマルドゥクは渾沌として乱れたティアマートの
五体の変形を行った。すなわち、それを『干物にしようとするときに魚を割くように』二....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
と手酷い試をやった。 あるいは大磐石を胸に落し、我その上に蹈跨って咽喉を緊め、
五体に七筋の蛇を絡わし、牙ある蜥蜴に噛ませてまで呪うたが、頑として退かず、悠々と....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
や、手をやすめず遣ってくれ、あわれと思って静に……よしんば徐と揉まれた処で、私は
五体が砕ける思いだ。 その思いをするのが可厭さに、いろいろに悩んだんだが、避け....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
待って、対の手戟の石突をつかないばかり、洋服を着た、毘沙門天、増長天という形で、
五体を緊めて、殺気を含んで、呼吸を詰めて、待構えているんでがしてな。 お嬢さん....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
な卓子台の陰ながら、膝に置かれた手は白し、凝と視られた瞳は濃し…… 思わず情が
五体に響いて、その時言った。 「進藤延一……造兵……技師だ。」 七....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
しい黒髪とが、わななくのを見た。この一雫が身に染みたら、荒鷲の嘴に貫かれぬお雪の
五体も裂けるであろう。 一言の答えも出来ない風情。 少年も愁然として無言で居....
「初雪」より 著者:秋田滋
であろう。しかるに自分はどうか。名ばかりながら今は生きながえらえている哀れなこの
五体は、柏の柩の底に、経帳子にしようと自分が選んでおいたあの絹衣につつまれた白骨....
「活人形」より 著者:泉鏡花
人を射て、右眼、得三の死体を見て瞑するがごとく、左眼泰助を迎えて謝するがごとし。
五体の玉は乱刃に砕けず左の肩わずかに微傷の痕あり。 明治二十六(一八九三)年五月....