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「人っ子〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

人っ子の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
、その明るい月の中を車でゆっくりと御出でになりました。が、何しろ時刻が遅いので、人っ子一人通らない往来には、遠田《とおだ》の蛙《かわず》の声と、車の輪の音とが聞....
寒さ」より 著者:芥川竜之介
に急いでいた。路の右は麦畑、左は汽車の線路のある二間ばかりの堤《つつみ》だった。人っ子一人いない麦畑はかすかな物音に充ち満ちていた。それは誰か麦の間を歩いている....
僕の帽子のお話」より 著者:有島武郎
たぽたと流れ出して来ました。 野原はだんだん暗くなって行きます。どちらを見ても人っ子一人いませんし、人の家《うち》らしい灯《ひ》の光も見えません。どういう風《....
溺れかけた兄妹」より 著者:有島武郎
どですが、九月にはいってから三日目になるその日には、見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。 私《わたし》の友達のMと私と妹とはお名残だといって....
外套」より 著者:ゴーゴリニコライ
どうやら、もう油がつきかかっているらしい。木造の家や垣根がつづくだけで、どこにも人っ子ひとり見かけるではなく街路にはただ雪が光っているだけで、鎧扉《よろいど》を....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
た」 しかと毛布《ケット》を絡《まと》いて、渠はあたりを※《みまわ》しぬ。 「人っ子一人いやしない。なんだ、ほんとに、暑いときはわあわあ騒いで、涼しくなる時分....
聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
けた。 「ところがどうでしょう。霙の中に二時間余り曝されていても、脳病院の裏には人っ子一人来ないのです。そこで始めて、あの電報が、私の幸福を嫉んだ悪党の仕業だっ....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
いつも朦気が立ちこめていて向こう岸が見えないんだからな。それにどっちを眺めたって人っ子一人見えないのに、時々泣き声や喚き声がどこからともなく聞こえて来る。――変....
第四次元の男」より 著者:海野十三
つやったもんだから、時計の針は十時を指していたが、外へ出てみると、あの雑鬧の巷が人っ子一人いないというほどでもないが、形容詞としてはそれに近いさびれ方であって、....
家なき子」より 著者:楠山正雄
サの母親はイギリス人であった、名前をミリガン夫人と言った。後家さんで、アーサは一人っ子であった。少なくとも生きているただ一人の子どもだと考えられていた。なぜとい....
怪しの者」より 著者:国枝史郎
でも見廻した西条様の眼には、菰をまとい竹の杖をつき、面桶を抱いた乞食のほかには、人っ子一人見えなかったはずで。そうしてまさかその乞食が、今のようなことを言ったと....
三甚内」より 著者:国枝史郎
勾坂甚内は身を飜えすと、小暗い家蔭へ消えてしまった。 寂然と更けた富沢町。人っ子一人通ろうともしない。 サ、サ、サ、サ、サッと、爪先で歩く、忍び足の音が....
名人地獄」より 著者:国枝史郎
た。前と左右は物寂しい荒野で、そうして背後は岩畳を隔てて、海に続いているらしい。人っ子一人通っていない。市の燈火は見えていたが、ここからは遙かに隔たっていた。別....
娘煙術師」より 著者:国枝史郎
よ」こういうと鴫丸は首を返して、今来たほうを振り返った。代官町のふけた通りには、人っ子一人いなかった。半町ほど先から道が曲がって、見通すことはできなかったが、そ....
白痴の知恵」より 著者:小酒井不木
てこの上もなく可愛がられました。彼の父は彼の七歳のとき病死しましたので、母親は一人っ子の留吉を杖とも柱とも思いましたが、留吉は母親の強烈な慈愛をも、まるで感じな....