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「他念〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

他念の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
なかった。ただ土鼠《もぐら》のように、命のある限り、掘り穿っていくほかには、何の他念もなかった。彼はただ一人|拮々《きつきつ》として掘り進んだ。洞窟の外には春去....
十二支考」より 著者:南方熊楠
また下り、また上り下る。一回は一回より増えて多く下る。この間蛇は、栗鼠を見詰めて他念なく、人これに近づくもよほど大きな音せねば逃げず、最後に栗鼠蛇の方へ跳び下り....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
るのはお角さんでした。 「友さん、お前、御苦労さまだがね……」 お角さんは存外他念なく、米友に対して物やさしい物の言いぶりでありました。 「御苦労さまだけれど....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
鈴木氏――おーい」 口々に叫んで、それを呼び生かそうと努力することのほかには、他念がないらしい。 呼び生かそうとは努力するが、その努力は狼狽《ろうばい》を伴....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
しきを愛《め》でて手折《たお》ろうとの道草もござりません、ただ一心に神仏を念じ、他念なく登ってくだるまでのものでございます。それ故、今晩のうちには、無事に戻って....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
る。 鶴見はそのおぎろなき慈悲に身を染めて、さながら如来智をでも授かったように他念なく随喜渇仰していたものである。その時である。ふと、ちらちらする動きを感じた....
顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
りしょう》で本式に腰蓑一つになって丈一の継竿《つぎざお》をうち振りうち振り、はや他念のない模様である。 気の毒なのはひょろ松で、質にとられた案山子《かかし》の....
二階から」より 著者:岡本綺堂
んでいる同級生が、かえってお前を羨むような時節がないとも限らない。お前はこれから他念なく出精して、植木屋として一人前の職人になることを心掛けねばならないと、私は....
三国志」より 著者:吉川英治
馴じまれていた。彼は、子どもらに孔孟の書を読んで聞かせ、文字を教えなどして、もう他念なき村夫子になりすましていた。 「また、そのうちに来るよ」 学舎の窓から雲....
三国志」より 著者:吉川英治
ど、実に法度によく叶っている。あれでは容易に近づき難い――と、以来、破陣の工夫に他念なき次第ですが、まだ確信を得ることができないのです」 「……しばらく、語るを....
私本太平記」より 著者:吉川英治
ていた。 「…………」 じっと、こちらを射たのも一瞬、公卿の眼はすぐ書物の上に他念もない。紙面の宋版の木活字が時にひらひら風にうごくのを、又太郎はなお凝視して....
雲霧閻魔帳」より 著者:吉川英治
顔をしていたが、もう彼が、草鞋を解きかけているので、少し針箱を片寄せてそのまま、他念のない針をチクチク運んでいた。 静かに心蓮は、彼女のうしろに立った。そして....
後の日の童子」より 著者:室生犀星
いとどめさせ、止むなく植込みの中に佇っていた。 童子は、それがいかにも安らかで他念なさそうだった。同じことを繰返しながら倦むこともなかった。母親は、虫のこえに....
梅ちらほら」より 著者:吉川英治
、梅の枝ぶりや花を写しているわけではありません』 答えると、また梅にむかって、他念なかったということである。 この話の中には、名匠的な精神のうちに、よくいわ....
大岡越前」より 著者:吉川英治
方の市川義平太の二与力をおき、この二人も、各※、小机に倚って、調書の整理や探究に他念がない。 宛として、ここは一つの犯罪研究室。 三与力の一名、山本左右太は....