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仮初
「仮初〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
仮初の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
きわめた表情を二つの目に集めて、倉地の顔を斜めに見返した。その冷ややかな目の光は
仮初《かりそ》めの男の心をたじろがすはずだった。事務長の顔は振り返った葉子の顔に....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
理を本能の如く知っているのは彼女だ。又正しく彼女を取り扱うことの出来ないものが、
仮初にも彼女に近づけば、彼女は見る見るそのやさしい存在から萎れて行く。そんな人が....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
《しと》ぐべき事を仕遂げずにはおかなかった。その年が暮れに迫った頃お前達の母上は
仮初《かりそめ》の風邪《かぜ》からぐんぐん悪い方へ向いて行った。そしてお前たちの....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
嫌《ごきげん》よう」 いよいよ呆《あき》れたる馭者は少しく身を退《すさ》りて、
仮初《かりそめ》ながら、狐狸変化《こりへんげ》のものにはあらずやと心ひそかに疑え....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
て、楽屋に舁かれて来ぬ。 しからざりし以前より、渠はこの僂麻質の持病に悩みて、
仮初なる俥の上下にも、小幾、重子など、肩貸し、腰を抱きなどせしなり。 月日に痛....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
っていた。 「…………」 「お願でござります。……お慈悲じゃ、お慈悲、お慈悲。」
仮初に置いた涼傘が、襤褸法衣の袖に触れそうなので、密と手元へ引いて、 「何ですか....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
も、司直はミチミたちを安穏に放置しておいた。しかし初冬が訪れると間もなくミチミは
仮初の風邪から急性の肺炎に侵されるところとなり、それは一度快方に赴いて暫く杜を悦....
「「いき」の構造」より 著者:九鬼周造
し」とは廓《くるわ》の掟《おきて》であった。「金銀は卑しきものとて手にも触れず、
仮初《かりそめ》にも物の直段《ねだん》を知らず、泣言《なきごと》を言はず、まこと....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
う、余はお浦を斯くまでも邪慳な女とは思わなんだが実に愛想が盡きて仕舞った。今まで
仮初《かりそめ》にも許嫁と云う約束を以て同じ屋根の下に暮して来たのが、忌々しい、....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
あの歌が青春に寄与したものだ。
そう云う追憶が子供のような感情で、
今己の最後の
仮初ならぬ一歩を引き留めたのだ。
お前達、優しい天の歌よ、好いから響き渡ってくれ....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
為を思うから、実はお辰めに逢わぬ昔と諦らめて奈良へ修業に行て、天晴名人となられ、
仮初ながら知合となった爺の耳へもあなたの良評判を聞せて貰い度い、然し何もあなたを....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
戸ッ児には、こうした女から一緒に死んでくれえと言われては後へも退かず、ツイ一夜を
仮初めの契りしたばかりに死出三途の道伴れまでして命惜しいとも思わぬ、これまでにさ....
「一商人として 」より 著者:相馬愛蔵
販売に一貫した経営で立っている。すなわちその正価というものが、中村屋では割引など
仮初にも出来ないほんとうの正価に据えられているのであって、この正価販売への精進こ....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
あろうと申されていたのを聞いて、私は涙ぐましく思ったことがありました。 師匠の
仮初の楽しみが、偶然葬式の料となったことなども考えて見れば妙なことと思われます。....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
、困難中に逝かれたことと、今度また折角苦しい中から、これまで育て上げた娘をほんの
仮初の病で手もなく奪られましたことは、私に取っては二つの不幸でありました。私は幼....