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低徊
「低徊〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
低徊の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
勿論猿でさえこのくらいだから、少し面倒な語《ことば》になると、何度もその周囲を
低徊した揚句でなければ、容易に然るべき訳語にはぶつからない。しかも毛利先生はその....
「羅生門」より 著者:芥川竜之介
に棄てられてしまうばかりである。選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を
低徊《ていかい》した揚句《あげく》に、やっとこの局所へ逢着《ほうちゃく》した。し....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
《ゆら》るる小舟《おぶね》のごとく、安んじかねて行きつ、還《もど》りつ、塀ぎわに
低徊《ていかい》せり。ややありて渠は鉢前《はちまえ》近く忍び寄りぬ。されどもあえ....
「茶の本」より 著者:岡倉覚三
する信念を回復してくれる。われらが土に葬られる時、われらの墓辺を、悲しみに沈んで
低徊するものは花である。 悲しいかな、われわれは花を不断の友としながらも、いま....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
いに引き摺られていた。時はすでに遠く過ぎ去っていることも解っていたが、それだけに
低徊の情も断ち切りがたいものであった。 それなのに庸三はしばしば飽満の情に疲れ....
「灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
慨禁ずる能わず、暫らくは焼けた材木の上を飛び/\、余熱に煽られつゝ彼方此方に佇立
低徊していた。其中に面会者があると云って呼びに来たので、何の書断片であるかは知ら....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
満つ。黒羽二重の紋着、萌黄の袴、臘鞘の大小にて、姫川|図書之助登場。唄をききつつ
低徊し、天井を仰ぎ、廻廊を窺い、やがて燈の影を視て、やや驚く。ついで几帳を認む。....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
さか頼朝公十八歳の頭蓋骨の感がないでもない。が、旅行者に批判は必要ない。すなわち
低徊顧望よろしく、雨に打たれて森のなかをうろついたわけだが、何でも記録によると、....
「学生と教養」より 著者:倉田百三
できぬ。それ故一定の目的をもって文芸に向かうものにとっては、それは活きてはいるが
低徊的である。それは行為の法則を与えようとしない。行為そのものを描く。ときとして....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
書きつづけていれば限りもなく追憶が湧きあがって来る。しかしいつまでもこのあたりに
低徊しているわけにも行くまい。というのは今やようやく生の自覚が目ざめたので、私の....
「明治の戦争文学」より 著者:黒島伝治
した詩がある。 自然主義運動に対立して平行線的に進行をつゞけた写生派、余裕派、
低徊派等の諸文学(夏目漱石などその門下、高浜虚子、長塚節、永井荷風、谷崎潤一郎等....
「漱石氏と私」より 著者:高浜虚子
光をも描かず小光と三蔵との関係も描かず、いわば大勢に関係なきものにてただ風呂桶に
低徊しているのではありませんか。そうしてその
低徊がそれ自身に於てあまり面白くない....
「父の墓」より 著者:岡本綺堂
せと、地に伏して瞑目合掌すること多時、頭をあぐれば一縷の線香は消えて灰となりぬ。
低徊|去るに忍びず、墓門に立尽して見るともなしに見渡せば、其処ここに散のこる遅桜....
「舞子より須磨へ」より 著者:小川未明
て其の友に遇わずに帰るのが悲しくて、また、何時か来られるか分らないのにと思うと、
低徊して去るに忍びなかった。 『敦盛そばや』に来て、この友に絵はがきにたよりを書....
「日本橋附近」より 著者:田山花袋
何を食うのでもなかった。ただ灯が明るい中を巻煙草をふかし/\歩いた。 ひとつの
低徊――たしかに人生の中のひとつの
低徊だった。そしてその時ほど人生のことがはっき....